●私が二拠点を求めた理由

餅をつく高橋久美子さん
地元での餅つき大会
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どの街も、魅力的で住めば都だ。けれど、完璧な人間がいないように、完璧な街もない。自分が何に重気を置いて生きるのかということなんだと思う。

悩んだとき、私は紙を出して書いて考える。例えば…人間関係のわずらわしさがないのが東京で、人と深く関わって暮らせるのが地方。家賃が高いけど交通の便も良くて車なしで暮らせるのが東京で、車が一人一台必要だけど家賃が安いのが地方。美術館もカフェも近いけど人と人が密になるのが東京で、美術館は車で一時間以上行かないといけないけど、自然が溢れていて人と密にならないのが地方。そうして、自分がどちらを求めているか分析してみる。私の場合の結論は、二拠点定住という形だった。

気持ちを切り替えるために、二箇所必要だった。書斎が東京で、生活は愛媛という感じかなあ。もう一つ、愛媛に拠点を持とうと思った理由は、畑を持ちたかったからだ。だったら、東京近郊で良いとも思うのだが、耕作放棄地が増えて荒れていく故郷を少しでもいい状態にしたいなと思った。そう簡単な問題ではないのは重々承知だけど、私には帰る理由があったのだ。

 

●夫婦であってもお互いが好きな場所を選んでいい

さて、一人ではない場合どうするかということだ。朝ドラ「おかえりモネ」で、主人公の百音と菅波先生が、気仙沼と東京で遠距離結婚をはじめたことは、静かに世間にパンチを食らわしたのではないか(おまけにコロナ禍で2年会えなかった)。ほとんどの場合、一方がどちらかの夢を支えるか、同じ夢を見るかだ。両方の夢を叶えるため遠距離になるというのは朝ドラ史上初だっただろう。この転回に時代の変化を感じたし、よくぞ描いてくれたなと思った。コロナで距離感が曖昧になった節もある。テクノロジーが人と人を気軽に結んでくれるようになった。だからこそ、実際に会う重要性も身にしみたし、会っている長さよりも、会っている時間をどう過ごすか、何を伝えるかの方が大事なのかもしれないと思った。

夫婦といえども個人であり、どちらかが夢を諦める必要はないということ。離れているから心が離れるということではないこと。そういう、新しい夫婦の形を教えてくれた。

二人に習ったわけではないが、私達夫婦も主に遠距離生活だ。近くにいたって離れてしまうこともあるのだから、お互い自分らしく生きればよしだ。

 

10年後、親の介護が始まっているかもしれないとか、農地は私一人でやることになるのかなとか、いろいろ不安に思ったりもする。けれど、まずは私が農業も作家業も楽しくやっている姿を仲間や家族に見てもらうところからだ。そういう背中を、甥っ子や姪っ子にも見せたい。たまには一緒にSwitchもやるけど、たまには一緒に畑をやろう。私や母、姉は、甥っ子や姪っ子を畑に連れ出すようにしている。私がそうだったように、将来遠くにいっても土のぬくもりとか感触を覚えていてほしいなと思う。