放置子だった私。「死ぬ気で生きようとした…」
ここからは親に放置されて育った子どもだったという方のお話をご紹介します。
「幼い頃から、放置されるのは当たり前でした」と語るのは京都府の主婦・友美さん(仮名・30代)。幼少期の服や靴、生活用品は、6歳上のいとこのお下がりだったといいます。
「いとこは三姉妹。長女~三女が着倒している古着で『もう捨てようかと思うけど、いる?』と、ボロボロになった衣服が、私に回ってきました。だから、身なりはいつもボロボロ。汚い服に靴は当たり前。与えられるだけありがたかったです。
髪の毛も洗ってもらうことがないのでシラミがわいていました。もちろん歯ブラシもありません。なので、虫歯だらけで歯は真っ黒でした」
小学生に上がっても親に放置され、勉強も教えてもらえず、塾にも行けなかったという友美さん。
「勉強ができないことが悔しかったので、友達のお母さんに頭を下げ『家の手伝いをするので勉強教えてください』と頼みました。犬を飼っているお宅では『犬の散歩に行くので勉強教えてください』とお願いし、友達の家を転々としながら、勉強を教えてもらっていました。
私の場合、友達のお母さんが、私の母に忠告(注意)していたのですが、そのたびに、私に罵声が飛んできました。それが怖かったので、友達の家に入り浸ったりすることはありませんでした」
持ち前のハングリー精神で、勉強を必死に取り組んだという友美さん。今は、自分のお子さんには同じ経験はさせたくないと、しっかり勉強を教えて、私立の小学校に合格させることができたといいます。
「幼いときに死ぬ気で生きようとした経験が活かされています」と友美さん。
放置子はしつけや常識以前に、生きることに必死なのだと思うと胸が痛みますね。そして、みんながみんな、同じように強くまっすぐに生きられるわけではありません。
放置子のおかれた状況は想像すると、とても悲しくなるし、知らぬ存ぜぬで、見ないフリをして突き放しておける話ではないなと考えさせられました。
●放置されて育った子どもたちの心のケア
「私は若いころ児童養護施設で働いていたので、ネグレクトの子はたくさん見てきました。そのような子の心のケアはとても大変な仕事でした」(神奈川県・Mさん・42歳)
「親、とくに母親が病気だったり仕事が忙しすぎたりすると、子育て自体ができないのだと思います。周りや行政の対応が必要です」(大阪府・Sさん・46歳)
放置子が置かれている過酷な環境とどう向き合っていくか、そして子どもを放置してしまう親側が抱える精神面や経済的な問題、非道徳的な考えをどうとらえるか、社会全体で真剣に考えていかねばならないフェーズに入っているのではないでしょうか。