家づくりでは、想定外のトラブルに見舞われることも。今回紹介する事例は、「落ち葉が原因で雨どいが詰まり、雨水があふれて滝のようになった」という建主Eさんの失敗談です。あわせて、一級建築士・大島健二さんからのアドバイスも紹介。
すべての画像を見る(全3枚)大好きなクルマのための駐車場を優先した結果…
当初、分譲マンションを検討していたEさん夫妻。友人から土地の紹介を受け、ひやかし半分で見学へ。現地の周囲の家には庭の奥に大きな木があって、借景が楽しめるほどに緑が豊か。肝心の敷地はクルマを3台並べても余裕の広さで、クルマ好きのEさんにはたまらない魅力。そこで急きょ方向転換して、この土地に家を建てることを決断しました。
夫婦ふたり暮らしなので、大きな家は必要なく、建物は平屋に。前面の道路側には3台分の駐車場を確保してもらいました。
「クルマが庭に並んで絵になる家にデザインにしてもらい、大満足でした」
愛車が並ぶ庭にご満悦から一転、落ち葉で悩む日々
引っ越しして秋を迎えると、隣家の落ち葉が庭に舞い込むように。せっせと掃除に励むものの、大量の落ち葉にお手上げ状態。悪戦苦闘の日々が続きました。やっと秋も終わろうかという頃に、連日の雨が。
「ある日突然、ものすごい音とともに、雨どいから滝のように水があふれ出たんです!」
後日、原因を探ろうと雨どいの中をのぞくと、大量の落ち葉が。「これが原因で、雨どいが詰まったんですね」。以来、秋になると、庭掃除に雨どいも加わって憂鬱な日々に。
「思い返せば、建物の配置計画のときに、駐車場にゆとりが欲しくて、家を敷地の奥側にかなり寄せてもらって。それがいけなかったんですね。建築家からも、隣家に木が多いと心配されましたが、押し切ってしまったんです」と、力なく笑います。
雨どいの取りつけは、敷地環境に注意。軒を出して設置しないという選択肢も
みなさんが、Eさんのような事態におちいらないよう、雨どいの取りつけについて一級建築士の大島健二さんが、アドバイスしてくれました。
●大島さんのアドバイス:
敷地や隣地に樹木の多い場合のみならず、少し離れたところに樹木の多い公園がある場合には、落ち葉による雨どいの詰まりを避けるために「雨どいを設置しない」という選択肢があります。ただしその場合には注意すべきことが2点あります。
1点目は、屋根からの雨水が外壁に伝って流れないように、できるだけ軒や庇(ひさし)を大きく出すことです。それによって雨漏りや外壁の劣化を防ぐことができます。
2点目は雨が落ちる地面の部分に「雨落ち溝」を設けることです。土のままだと泥はねが外壁を汚し、コンクリートなどでもはね返りにより排水経路が定まりません。排水溝のようにする必要はなく、表面は砂利敷きで水が地面に浸透しやすい状況をつくり出すことが必要です。
雨は風をともなうことも少なくありませんので、できるだけ幅は広くしたほうがいいでしょう。しかし、敷地内にうまく雨を落とせるスペースを確保できなくて、どうしても雨どいを設けなくてはならない場合は、落ち葉よけのネットを設けることも可能です。
※情報は「住まいの設計2021年12月号」取材時のものです