梅雨に入るこの時季、カビが引き起こす健康被害に気をつけるべく、毎日の掃除に力を入れたいもの。

しかし、「一見きれいになっているようでも、じつは見えない病原体をかえって塗り広げていたり、見えないホコリをまき散らしているケースがとても多いんです」と話すのは、『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』の著者であり、亀田総合病院などで30年間、感染を防ぐ掃除に携わってきた松本忠男さん。

掃除の常識
その掃除法、じつは間違っているかも?
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その掃除法、じつは間違っています!病気にならないために見直しを

「家の中で目に見える汚れはたったの2%。残りの目に見えない98%の汚れに含まれるウイルスや菌によって、家のなかで病気にかかったり、または感染が拡大してしたりするのです」

そこで松本さんに、「なんとなく当たり前だと思われているけれど、じつは間違っている掃除の習慣」と、「本当に正しい掃除法」について教えていただきました。

●その1:床の汚れをぞうきんやウェットタイプのフローリングワイパーで掃除するのはNG!

菌やウイルス・カビは、家の中でホコリをエサとして増殖します。
「床を濡れた雑巾やフローリングワイパーで掃除すると、これら病原体を含んだホコリをかえって家じゅうの床に塗り広げることになるのでNG」

家の掃除は、ドライのフローリングワイパーで、ホコリを舞い上げないように、一方向に向かって、ゆっくり静かに取り去るのが正解です。

●その2:テレビなどの家電製品、化繊ハタキなどでホコリを取るのはNG!

化繊ハタキは静電気で一時的にホコリを吸い寄せますが、すぐに再び飛散してしまいます。
「ハタキをパタパタしても、菌を含んだ汚いホコリを舞い上げて自分で吸っているようなもの。家電などのホコリは、乾いたマイクロファイバークロスで、やはり一方向に向かってそっと取り除いてください」

●その3:漂白剤を使わない風呂掃除のとき、窓を閉めきるのはNG!

「風呂場のお湯の注ぎ口やシャワーヘッドのぬめりには、MAC菌という聞きなれない病原体が潜んでいます。結核菌に似た菌で、これが引き起こす肺疾患・肺MAC症が日本で急増しており、年間1000人以上が亡くなっています」

このMAC菌への感染を防ぐためには、漂白剤を使うときに限らず、風呂掃除の際に窓の両側を10cmずつ開けて、換気をしながら行うのがいいそう。

●その4:トイレ掃除で、床をウェットシートでふき上げるところから始めるのはNG!

「トイレだけでなくどの掃除にも言えることですが、掃除の基本は『上から下』。下を先に掃除しても、そのあと上を掃除したときに、ホコリが舞い落ちて、せっかくきれいにした下が汚れてしまいます」

また、トイレは服の脱着やティッシュペーパー、さらに廊下のホコリまでも吸い寄せて、大腸菌や黄色ブドウ球菌を含んだホコリの温床となっているそう。

スクイージー
スクイージーに切れ込みを入れた道具が床掃除に便利

「ここをいきなりウェットシートで掃除しても、病原体を塗り広げるだけ。窓の水きりなどに使うスクイージーに切れ込みを入れた道具で床をさっとなでると、細かい部分のホコリまでおもしろいように取れるのでオススメです」

●その5:ラグやカーペット、掃除機を力いっぱい往復させるのはNG!

掃除機を力いっぱいかけると、その動きでダニやホコリが舞い上がってしまいます。また、素早く動かしても、ラグやカーペットの中に入り込んだダニやホコリを吸い取ることはできません。
「できれば天日干しをするのがいちばんなのですが、難しい場合は、1mあたり5、6秒かけて、パワーブラシモードでゆっくり掃除機をかけるようにしてください。手前から奥に押し出すようにかけるのではなく、奥から手前に引くようにかける方が、効率よく繊維内にたまった汚れを吸い込むことができます」

松本さんによると、感染を防ぐためには、「徹底的に掃除するというよりも、その際の道具や動き方によって汚れを拡散しないように気をつけること」が大切。
がんばりすぎる掃除が、かえって自分や家族の健康を害してしまうとすれば、とてももったいないことです。

「正しい道具をつかって」「最小限の動きで」「汚れをまき散らさない」という観点から、日々の掃除を見直してみませんか。