●私の人生から元夫を切り離したい

一時保護のため、シェルターに入居できるのは3か月が限度。生活保護を受けながら、子どもと2人で住む家を必死になって探しました。気がかりは夫が離婚に応じてくれそうもなかったこと。 

3か月後、施設を出て、息子と2人のアパート暮らしが始まりました。生活保護を受けながら、子どもを保育園に預け、近所のお弁当屋さんで毎日8時間パートで働くという生活。少しでもお金が欲しいのに、離婚が成立していないため、児童扶養手当の申請もできません。現実にはひとりで子育てしているのに、とやるせない気持ちになりました。 

ようやく離婚が成立したのは、家を出てから10か月後。こんな目に遭わされたのだから、慰謝料をもらいたいと思ったし、養育費も取れるものなら取りたかった。でも、裁判所で争ったところで彼から取れるとも思えなかったし、約束したって守る人ではありません。それになにより関わりをもち続けるのがイヤだった。だから生活はカツカツで貯金もできないけれども、相手にはなにも求めず、いっさいの接触を断って今に至ります。 

離婚から5年、心の傷が癒えたとはまだ思えませんが、早く忘れてあの男を自分の人生から切り離したい。息子には「お父さんは、お星さまになっちゃったんだよ」と言っています。
目下の不安は私の健康。パートだと病気で休めば収入減に直結し、健康問題がそのまま金銭問題になってしまう。できれば息子が小学校に上がるタイミングで安定した仕事に転職し、生活保護をもらうのをやめたいです。

生きがいは子ども。生活は苦しいけれども、私にはこの子がいる。この子を守り育て、成長を見届けることさえできれば、ほかになにもいりません。

離婚を決めたら、支援制度を活用して、ライフプランの立て直しを

離婚後のお金事情
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「離婚を決めたら、ライフプランを立て直す必要があるので、家族や友達など身近な人ではなく、ファイナンシャルプランナーや弁護士など第三者の意見を聞いて」とファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは言います。

さらに、「シングルマザーが使える制度があるのに、使っていない人も少なくありません。公的な支援制度をフル活用して、とにかく自分の足で立つことが重要」と続けます。

交通機関の割引、下水道料金の減免、塾代や受験料の補助など、自治体によって支援制度はさまざま。なかにはあまり知られておらず、十分に活用されていないものも多いのだとか。

「シングルマザーになったら、まず自分が住んでいる地方自治体の窓口で、『ひとり親のしおり』を手に入れてください。制度はときどき変わるので、毎年チェックしましょう」 

離婚問題に詳しい弁護士の比留田薫さんも「シングルマザーになる前に、一度は法律相談を受けて。法律で解決できることはたくさんあります」と指摘します。

たとえば、「離婚時に公正証書をつくっておけば、元夫からお金が引き出せたのに」というケースも多いとのこと。無料で法律相談が受けられる行政の「法テラス」もあります

●キーワード

・生活保護

生活保護は、収入が最低限度の生活費よりも下回ると判断された場合に、自活できるようになるまで不足分を国が補助する制度。衣食住費など日常的な費用が支給される「生活扶助」と、教育、住宅、医療、介護、出産などの費用が支給される「その他の扶助」があり、程度に応じて生活保護費の支給や医療扶助が受けられます。:「生活保護はさまざまな扶助の集合体。仕事をしているからダメ、持ち家だからダメと、最初から諦めずにまずは確認を」(畠中さん)

・慰謝料

離婚の際の慰謝料は相手の行ったことによって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のこと。浮気や暴力などによって相手が離婚原因をつくった場合に請求できます。金額や支払い方法に決まりはなく、夫婦で話し合って自由に決めることができます。
「夫と対面したくない場合は、弁護士に依頼すれば、代理人となって夫に請求してくれます」(比留田さん)

・母子家庭自立支援給付金

シングルマザーの就業支援策「母子家庭自立支援給付金」は2種類。
1つは、就職や転職、スキルアップのため、対象講座を受講すると受験料の6割(上限20万円)が助成される「自立支援教育訓練給付」。

もう1つは、看護師や介護福祉士など、1年以上学校に通学して必要な資格を取る場合、毎月一定額を補助する「高等職業訓練促進給付金」。正規雇用や収入アップを目指すための足がかりとなります。