作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回は、明治生まれのひいおばあちゃんの着ていた浴衣が、形を変えて久美子さんのもとに届いたお話や、その気づきについてつづってくれました。

第29回「人も物も循環するのね」

暮らしっく
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●時代を越えて遠い過去から渡ってきたスカート

朝夕めっきり肌寒くなってきた。ゴーヤーはまだ元気に育っているが、指折り数えてみると、2020年もあと3か月ちょっとで終わるみたい。今年は立ち止まって自分の大切なことや足元を見直すきっかけになった一年だったな。残りの日々に書かなきゃならない原稿のペース配分をする。

先日、ミュージシャンの友人に久々に会った。
「大きな夏休みをもらった感じだよ」
と明るく言っていて、前向きに自分が次にどんなことをすべきかを考え、発信しているのが印象的だった。ライブハウスに集まることはまだ難しいかもしれないけど、新しいチャレンジを始めるきっかけになったし、何よりどのくらい自分にとって今の仕事がなくてはならないものだったのかが分かったとも言っていた。うん、私も同じかも。自分の足元を確かめる時期になったね。数年ぶりに会って、変わらず頑張っている姿を見てこっちも元気になった。数年に一度また会おうねと言って別れた。

そんな中、半年以上帰ってない実家の母から電話があって、
「ねえ、ひいおばあちゃんの浴衣をほどいてロングスカートを作ったんじゃけど、久美子はかんで?」と言う。
姉にも妹にも少し長かったそうで、8センチ切れば妹に合うから切ろうとしたら、姉が
「切るのもったいないねえ。あ、久美子だったらぴったりなんじゃない?」
と思いついたみたい。私が二人よりちょっとだけ背が高いのだ。

「なんか、シンデレラみたいな話じゃなあ」
と笑った。そうして野菜や米と一緒に私の元にスカートが届いた。

黒のスカート

写真でしか見たことがない曾祖母。私のことも抱っこしてくれたと、とても優しくて働き者だったと聞く。履いてみると、ぴったりじゃないか。

「この浴衣、おばあちゃんが、ひいおばあちゃんのために縫った浴衣じゃないかな、もったいなくてあまり着てなかったみたい」

「確かに、おばあちゃんが好きそうなちょっと奇抜な柄じゃなあ」

と笑った。

明治生まれの曾祖母のために祖母が仕立てた浴衣を、母が仕立て直して38歳になったひ孫がスカートとして着るという、なんちゅう巡りだよ! 時を越えて、遠い過去からプレゼントをもらった気持ちだった。

こうして、少しずつ人は人と力を分け合って生きているんだなと思う。疲れているときにスーパーのレジでかけてもらった「ありがとうございました」や、メールの中の「また会おうね」や、ゴミ出しのときの「おはようございます」。100円玉貯金みたいに、そういう細やかな温かさがたまって、明日の力になったり、誰かへの心配りに変わったりするのかな。

●再利用できるものはたくさん。楽しくやれることが一番

スーパーと言えば、買い物袋だよ。数か月、マイバッグにしてみて思ったことは…(ゴミ出し用のゴミ袋を買うようになったな~)という心の声。だから、私は大きいレジ袋はもらうことにしちゃったよ。大家族なら足りないだろうけれど、私は2人家族なので、週2回出す可燃ごみは、スーパーのレジ袋がジャストの大きさだったのだ。少ししか買わないときはSサイズ袋になるのでもらわない。大きい袋のときだけもらってゴミ出しに再利用するということにしました!

スーパーのレジ袋を削減しても石油系のゴミ全体の2%の削減にしかならないそうで。だって見渡してみても、肉や魚のパック、ペットボトル、お菓子のパッケージ…何もかも石油系燃料で作られている。きっと各社、分解できるプラスチックにしたり使用量を減らしたり努力を重ねている段階なのだと思うのだけれど…。

フルグラの中にお米

母が、スカートと一緒に送ってきてくれた米は、フルーツグラノーラの赤いナイロン袋に入っていた。さすがやなあと、面白くて笑った。

母から送られてくるものは、こうやって再利用のジッパー付きナイロン袋に入っていることが多い。食品が入っていた袋というのは非常に作りが丈夫で、なかなか破れない。それに、酸化しないよう内側が光を通さない加工になっている物も多いので米などを貯蔵するのに最適なのだ。余分なプラスチックごみを出さないことは大切だけれど、こうしてあるものを再利用することもエコの一つだなと思う。

母は私が子供のころからこうやって「あらこれ便利ね」と、何でも再利用してしまう達人だったので、多分エコだとかそんなことは意識してない。それが一番かっこいいなって思うのよね。工夫して暮らすことが義務ではなくて、面白いになるともっと生活は楽しくなるんだなあと思ったのだった。

【高橋久美子さん】

1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。近著に、詩画集

「今夜 凶暴だから わたし」

(ちいさいミシマ社)、絵本

『あしたが きらいな うさぎ』

(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集

「いっぴき」

(ちくま文庫)、絵本

「赤い金魚と赤いとうがらし」

(ミルブックス)など。翻訳絵本

「おかあさんはね」

(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:

んふふのふ