●テレワークをチャンスととらえ、家事分担について話し合おう

顎に手をあてる女性
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武藤さんは、今のうちに家事分担について話し合う時間を設けることをすすめています。

「在宅勤務が増えたことで、家庭内の男女のあり方を再考する機会になるかもしれません。この機会に、ケンカにならない程度に今後の家事・育児分担について話し合うことが対策になります」

お互いに不満が爆発してからでは、話し合いも穏やかに進めることができないかもしれません。テレワークを「今だけ」ととらえず、先々のことも考えて、早い段階で時間を設けることが大事になります。

●それぞれのパーソナルスペースをきちんと確保すること

また、武藤さんはそれぞれがパーソナルスペース (心理的な縄張り) を確保できなくなったことでフラストレーションがたまっていることも関係悪化の要因として挙げています。

「これまでは男性が働きに出る、または共働きしていたことで、お互いに適度な心理的距離が取れていました。日中は別々の空間や時間を過ごし、自分のペースとリズムを確保していたので、精神的なバランスが取れていたのです」

しかし、テレワークにより、ひとつの環境に家族が留まらなければならないといけなくなり、自分のパーソナルスペースが確保できず、時間のリズムも狂ってしまいました。そのことによってお互いにフラストレーションがたまり、ささいなことでケンカや暴力などを引き起こし、関係性の破綻に繋がっている可能性があるのです。
実際の声を聞くと、これに関しては双方がストレスをためてしまっているケースが多いことがわかりました。

「ひとりの時間が一切取ることができない。リビングでは夫がゲームしながら寝そべっているくせに、夜に私がくつろいでいると『早く寝たら』などといちいちカチンときます」(37歳・妻)
「普段はそんなに会話をしていなかったけど、一緒の時間が増え、妻がどうでもいい愚痴や不満、同じ話をしてくるので疲れる。ひとりにさせてほしい」(41歳・夫)

こういったフラストレーションが溜まっていくと、いまさらなる問題として起こっている家庭内暴力へと繋がってしまいます。この対処法として、武藤さんはこう教えてくれました。

「1日のなかで、少しでもいいので、各々が自分の空間と時間を確保することが重要です。たとえば、ひとつの部屋にとどまりすぎないことや、社会的距離を保ったうえでの散歩やスーパーへの買い出し、ベランダやバルコニーでの日光浴、目を閉じてゆっくり深呼吸する時間を設けるなどが効果的です。どうしても長時間ひとつの部屋にとどまる必要がある場合は、イヤホンをして音楽を聴いたり、映画やドラマを観たりして自分だけの世界を確保するといいでしょう」

今回の新型コロナウイルス問題は、社会的混乱も重なり、だれしもが不安や恐怖を感じています。ただでさえ、人間関係に溝が入りやすい条件が重なっているいま、少しでも精神的なストレスを解消していきながら、乗り越えていきたいですね。