「なんで? 不育症対策の薬を飲んでも流産するんですか? 見間違いじゃないんですか? もう心臓は動かないんですか?」
感情を抑えられず、医師に向かってそう泣き叫んだそうです。

エコー写真
3回目の妊娠時のエコー写真。右2枚の時点では心拍停止していたそう(ASCAさんご提供)
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しかし、手術当日も心拍は停止したまま。ASCAさんは20代という若さで、3回連続の流産を体験することになりました。さらに、「不育症対策をしたにも関わらず流産」という事実が追い打ちをかけ、絶望のあまり自殺を考え始めるように。精神科にかかると、「重度のうつ病」と診断されました。

●「若いから何度も妊娠すればいつか産める」と医師は言うけれど…

ASCAさんはとうとう妊娠することが怖くなってしまい、現在は妊活を休み、うつ病の治療に専念しています。

「妊活を休みたいと不育症専門医に伝えたら、『え? 若いうちに何度もトライしたほうがいいよ』と言われました。『何度も』って残酷な表現すぎませんか? それに『若いうちに』と言うけれど、私は20代で3回妊娠したのに全部流産したわけで…。私は産む機械じゃないんです。感情のある人間です。これ以上流産したら、うつが悪化して自殺するかもしれません」

不育症の原因や治療法は研究途上にあり、原因がわからないまま流産を繰り返す人は65%以上にのぼります(厚生労働省研究班不育症研究調べ)。さらに原因が判明したとしても、100%流産を防ぐ治療法は確立されていないのが現状だそうです。ASCAさんもこの経験を機に、自力でさまざまな文献を読み漁るようになりました。

「医学統計上は『加齢は流産リスクを上げる原因の一つ』とされているので、比較的若い不育症患者は『何度も妊娠にトライしよう』と言われるケースが多いようです。今年から、反復流産を防ぐための臨床研究として『着床前診断(体外受精をした胚の染色体や遺伝子検査を行い、異常がない可能性の高い胚だけを子宮に戻す方法)』が多くの施設で実施されるため、それに望みを託す患者さんも少なくありません。今後の研究発展が待たれるところです」

●流産を繰り返す前に、不育症の検査を受けたかった…

女性横顔
流産を繰り返し、妊娠するのが怖くなったという女性も多いといいます(※写真はイメージです)

最後にASCAさんは当事者の一人としてこう嘆きました。

「流産は、女性の体だけでなく心も深く傷つける体験です。なのに『不育症』という言葉も必要な検査も、自力で調べるまで、一般の産婦人科医は教えてくれませんでした。こんなに流産を繰り返す前に、『不育症検査』や『胎児絨毛染色体検査(流産した胎児の染色体異常の有無を調べる検査。結果によって今後の流産対策が大きく異なる)』を受けたかったです」

流産は「運が悪かった」の一言で片づけられてしまいがちですが、妊娠した女性の心にも体にも負担が大きく、できる限り避けたいもの。詳細な検査を受ければ原因が判明し、今後の対策が見つかる可能性はあるといいます。
ただ、現時点ではASCAさんのケースのように、流産を繰り返して初めて知る検査もあります。現在の当事者には、文献などで正しい情報を得る姿勢も必要なのかもしれません。