インターネットを検索するとたくさんの健康情報が並んでいますが、出典がしっかりしていないものも多数。
「まず、覚えておきたいのは『健康になるための方法に“抜け道”はない』ということ。“不摂生をしてもこれさえ飲めばOK”“どんなに食べても、帳消しにできる”といったものや健康常識はすべてウソです」と言うのは、医師の秋津壽男先生。
その健康常識、間違ってるかも!がんや休肝日に関するウソ・ホント
そこで秋津先生に、ちまたに流布する健康常識のウソ&ホントを教えてもらいました。
●「焦げた焼き魚を食べるとがんになる」はウソ
すべての画像を見る(全3枚)子どもの頃、「焦げた焼き魚を食べるとがんになる」と親に言われた記憶はありませんか?
気になるのは「焦げ」の発がん性。しかし、普通に生活するうえで口にする量であれば、それほど心配する必要はありません。
むしろ、気をつけたいのは肉類の食べすぎです。日本人の腸内細菌は欧米人と異なり、米や魚はうまく消化できるものの、動物性の肉や脂肪は分解しづらいのが特徴です。そのため、肉ばかり食べていると腸内環境が荒れ、大腸がんのリスクが高まります。
肉中心の食生活の人は、腸内環境を整えるヨーグルトなどを食べるとよいでしょう。
●「ケーキより干物の方ががんを誘発する」はホント
「ケーキ」と「干物」、どちらが体に悪そうでしょうか? 一見すると、ケーキの方が悪そうですが、意外にも干物の方が食べ続けるとがんになりやすいのです。
がんにおいて、圧倒的に問題になるのは「塩」です。塩分のとりすぎは高血圧を引き起こすのと同時に、刺激が強く、胃壁を荒らします。その結果、胃がんのリスクが高くなるのです。
世界保健機関(WHO)の食塩摂取目標は1日5gですが、国民栄養調査(平成28年)によると、日本人の成人の食塩摂取量は平均9.9gと大幅に上回っています。なるべく、減塩を心がけていきましょう。
●「甘党より辛党の方が突然死しやすい」はホント
食べ物の好みは寿命を左右する大きな要因のひとつと言われます。なにを選び、どのくらいの量を食べるかで、長い目で見ると健康に大きな違いが出ます。
たとえば、塩辛いものが好きな人がなりやすいのは高血圧。脳梗塞(のうこうそく)や脳出血、心筋梗塞、大動脈瘤解離(だいどうみゃくりゅうかいり)など、突然死につながる病気のリスクが高まります。
一方、甘いものが好きな人は、肥満や糖尿病といった生活習慣病を招く恐れが。大前提として、塩分も糖分もとりすぎは健康を害しますが、突然死の危険を考えると、高血圧による血管系疾患の方がハイリスク。塩分控え目の食事を心がけましょう。
もちろん、糖尿病も長い目で見ると命に関わるため、油断は禁物です。
●「週に1日の休肝日はなくていい」はホント
健康のためには、お酒を飲まない「休肝日」を設けた方がいいとよくいわれます。しかし、週に1、2日程度お酒を飲まなくても、休肝日としてはあまり意味がありません。適量なら、毎日お酒を楽しんでもOK。
ただし、肝臓機能を表すガンマGTPの数値を下げるには、1、2週間お酒を断つ必要があります。大切なのは、休肝日より、お酒を飲む量が適切であることです。
また、肝臓の強さは生まれつきのもので、お酒に酔いやすいことと、肝臓の強さは必ずしもイコールではありません。
「顔がすぐ赤くならないし、酔わないから肝臓も強いはず」と決めつけず、適量(下表参照)の範囲内で楽しみましょう。
【1日のアルコール摂取量の目安】
・清酒:1合
・ビール:500ml缶1本
・ワイン:1/4本
・焼酎:0.6合(110ml)
・チューハイ:1.5缶(520ml)
・ウイスキー:ダブル1杯
※出典:厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査」
●「年をとったら野菜中心の食事にして肉は控えた方がいい」はウソ
年をとったら肉料理は食べない方が健康にいい、といったイメージがありますが、じつはある程度年齢を重ねた人こそ、積極的に肉をとった方がいいのです。
70歳になってもしっかり肉を食べられるのは、“食べる力”がある証拠。年をとったからといって、無理に魚でタンパク質をとる必要はありません。
肉には、タンパク質やビタミンB群などが豊富に含まれており、積極的に食事に取り入れるといいでしょう。
ただし、カロリーやコレステロールには注意したいもの。脂肪をとりすぎないよう、肩やヒレ、モモなど脂身の少ない部位を選ぶのがコツ。
また、「網焼きにする」「ゆでる」「煮る」など、脂を落とすよう調理法を工夫しましょう。