親ならば、子どもを愛するあまり、悩みもつきないもの。つい「勉強しなさい」「ちゃんとしなさい」とプレッシャーをかけてしまうことも。
コピーライター、作家として活躍し、子育てに関する著書もあるひすいこたろうさんには、現在高校2年生の息子さんがいます。ひすいさんご本人によると、息子さんは“学校のテストではしょっちゅう0点を取ってくるようなできの悪い子”だけど、とてもかわいくて溺愛しているのだそう。
「父として向き合い、悩みつつも子どもに学ぶことが大きいです」と語るひすいさん。ここではひすいさんに、子育ての悩みをラクにする考え方をを語っていただきました。
子育てとは親育て。ひすい息子が“鬼嫁”を変えた奇跡
すべての画像を見る(全2枚)●子育てが一気にラクになる考え方「子どもは未来からの客人」
子育てをすると、「ちゃんと育てなきゃ」と思うとプレッシャーがかかりますが、子育ての本質は、親が子どもに育てられている、というのが真相です。
子どもが先生なんです。
子育てとは、じつは「子どもによる、親育て」なんです。
「子どもが言うことを聞いてくれない、反抗される」という状況に真剣に向き合うなかで、親が成長します。
「ほかの子と比べて、うちの子はちょっと成長が遅いかもしれない」と悩むことで、その人らしさとは何かを考え、親の愛が深まっていきます。
『星の時計のLiddell』(内田善美著)という漫画で「子どもは未来からの客人だ」というセリフがあるんです。自分がけっして見ることができない未来社会で生きる未来人たちが、過去を学びにやってきた存在。それが子どもだと。
「だからいいもてなしをしてやりたい。未来に帰って幸福なみやげ話ができるように」って。
本当にそうだなって思うんです。携帯電話が毎年進化するように、子どもたちはこの星の未来を見せてくれる先生。
そんな未来人たちに「幸福なみやげ話」を渡したくないですか?
●妻の変化。赤点を嘆くのではなく、イケメンを喜ぶように
ニューヨークタイムズ紙でこんな記事が掲載されました。
「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
今の価値観では、計り知れない未来を生きる子どもたちが、今の学校の成績で、その可能性をはかれるわけがないのです。
また、僕は大学の時に友人と学習塾をやっていた時期があるのですが、できの悪い生徒が多いクラスほど、先生が成長することに気づきました。
そのときこう思ったんです。「なんだ! 先生の先生は、できの悪い子じゃないか!」って。
子どもに教えることで、その100倍教えられるのが、「子育て」なんです。
僕の息子は、勉強ができる子ではありません。
うちのカミさんは、怒りっぽく、息子が勉強しないことにもイライラしていた。だから、「勉強しなさい」といつもガミガミ怒っていました。
そんななか、高校生になった息子が赤点を4つも取り、赤点を取った15人の生徒と親が学校に呼び出されたことがあります。
もう、カミさんがいちばん怒るパターンです。
学校に呼び出されたカミさんは、緊張の面持ちで「負けられない戦いがある」と一言残し、向かいました。
数時間後、カミさんはこう言って帰ってきたんです。
「15人の赤点生徒のなかでうちの子がいちばんイケメンだった」
なんと、そう喜んでいたのです。
驚きました。カミさんは赤点を怒るのではなくイケメンを喜んでいたんです(笑)。
言うことを聞かない息子に鍛えられて、ついにカミさんの器も広がりだしていたんです。
「先生に『お宅の息子さんが進級からもっとも遠い男です!』と言われちゃって。でも、ある意味、アイツ、ついに一番になれたよね」とニコニコしていたんです。
ついに、カミさんも成績の悪い息子を楽しみだしたのです。
これは革命だって思いましたね。
●できの悪い子こそ、親の器を広げてくれる偉大な教師
僕としては、イライラしやすいカミさんをこれまでずっとなんとかしたかったんですが、できなかったんです。でも、そんなカミさんを変えることができたのは、息子だったのです。
ちなみに、次のテストでも息子は赤点王に輝き、またもや親が呼び出されました。しかし、カミさんはやはり前のカミさんではなかった。
「たとえ進級できなくても、結果はすべて受け止める。全部がアイツの個性だ」と言って学校に向かったのです。
できの悪い子こそ、親の器を広げてくれる偉大な教師(マスター)だったんです。
名づけて「できないもんマスター」です。
このように子育ての真実は、「親育て」です。未来からやってきた、世界一かわいい家庭教師があなたをもっと優しく、愛に溢れた存在に導いてくれるんです。
永遠に続くかのように思える子育ても未来から見たら一瞬で過ぎていくかけがえのない時間です。
この奇跡のような時間をどうぞ、楽しんでくださいね。
そんなひすいさんの息子さんと奥さんの物語は、ひすいさんの新刊『できないもん勝ちの法則』(扶桑社刊)につづられています。こちらもぜひチェックを。