ハリウッドセレブや、芸能人、文化人など、影響力のある人たちの間で、保護動物の問題への取り組みが活発になっています。さまざまな理由で手放された動物たちを助けるために、家族として自宅に引き取る人も増加中。

そんな保護動物をサポートする団体の譲渡会の様子をESSEが取材しました。レポートしてくれたのは、自身も保護犬を家族として迎えたイラストレーターの岩沢さんです。

ブームの影響で「普通の感覚」で譲渡会を訪ねる人が増加

ミグノン
保護動物をサポートする団体の譲渡会の様子をレポート
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飼育放棄された犬猫などの動物を、受け入れて保護し、新しい家族との出合いの場を提供している動物愛護団体「ランコントレ・ミグノン」。代表の友森玲子さんは、都内でペットサロンと動物病院、保護施設がひとつになった「ミグノンプラン」を運営し、活動の拠点としています。

3年前にわたしたちが迎えた保護犬、「ふうちゃん」ともこちらの団体が月に2回開いている譲渡会で出合いました。今回、あらためておじゃまして、友森さんに保護動物を取り巻く現在の状況についてお話をうかがってきました。

ペットサロン
生体販売をしないペットサロン、動物病院を経営し、保護活動の運営資金に
外観

――保護動物がテレビや雑誌で取り上げられる機会が増えましたが、変化したことはありますか?

認知度アップ

活動を始めた10数年前より、格段に認知度が上がっているのは感じます。

活動当初は、「かわいそうな保護動物を引き取りたいんです」という人も多かったんです。

 

ハンディキャップがある子に申し込みが殺到したりして、「ハンデがあってかわいそうだから」「捨てられてかわいそうだから」という、どうしても人間の方が上だという目線だったのが、今は、いい意味で「意識が高くない」人が、普通にパートナーを探しに来てくれるようになりました。

 

多くの人に認知されて、間口が広がったのはよかったなと思います。

ペットショップではなく、動物を家に迎える選択肢のひとつに譲渡会がある。そうなることをずっと求めていて、だいぶ近づいてきた感じです。

ハンディキャップがある子も
動物たちの種類や年齢はさまざま。ハンディキャップや持病を抱えた動物も

――ミグノンさんでは、東京都動物愛護相談センターから受け入れた動物を保護していますが、どういう経緯で手放されることが多いのでしょうか?

「もう飼えない」

現在、行政では動物取扱業者からの引き取りはしていないので、基本的に、一般の人が「もう飼えない」と言って手放した子を引き取っています。60%以上が高齢者による飼育放棄ですね。

――飼育放棄は避けられないことなのでしょうか?

単純に知識の問題なので、ほとんどは避けられます。
高齢者が飼えなくなるのは、自分が年を取り過ぎてしまったから。結局、飼い始める時期が遅すぎたということなんですよね。

犬猫がだいたい20年くらい生きるのに、たとえば60代後半から子犬や子猫を飼い始めて、80歳を過ぎて世話ができなくなってしまう。
年齢を重ねたら、体力が衰えたり、具合が悪くなったりするのはわかりきったことなので、計算ができていないというのが、いちばんの問題です。

――ペットショップでは、飼い始めるときにそこまでの確認はしないですもんね。

そうですね。お金さえ払えば渡してしまうので。
ひどいと、80代で子犬や子猫を飼っています。センターへの問い合わせの電話をミグノンで受けているのですが、若い純血種の保護依頼が来ることがあり、気になって飼い主さんの年齢を尋ねてみると、高齢の方というケースはとても多いです。

飼育放棄をする前に、まずは写真を送ってもらって、インターネットで募集をかけるなどの協力もするのですが、お年寄りがなんとなく飼っている場合は、きちんとしつけができていない子が多くて。「トイレもまだできないんです」とか「すごくかみつくんです」とか…。
出だしでつまずいてしまうので、難しいケースが多いです。

保護動物のためにわたしたちができること

じつは、わたしがお話をうかがっている間にも、友森さんに保護依頼の電話がかかってきていました。「犬を引き取ってほしい」との問い合わせに、「まずは募集をかける手伝いをします」と答えると、「すぐ引き取ってくれないならいい」と電話をきられてしまったといいます。

「本当は、余裕が出てきたら、ああいう電話のところこそ様子を見に行きたい」と語る友森さん。飼い殺しになっていたり、どこかに遺棄されてしまったりするリスクも考えられるのだそう。

それでも、保護団体の努力もあり、東京都では2016年度の犬の殺処分数はゼロを達成するなど、保護動物を巡る状況は一歩一歩改善していっています。

――保護動物を引き取るほかに、わたしたちができるサポートはあるのでしょうか?

ボランティアとして支えてくれている人もたくさんいます。
新しい家族が決まるまで、保護動物を自宅で世話する「預かり」ボランティアのほかに、犬猫を保護しているシェルターへの「通い」のボランティアの方もいます。
家で動物を飼えない人も多いので、仕事帰りや休みの日にシェルターの掃除や、動物の散歩などをお願いしています。

そのほかに、募金や物資の寄付、チャリティーイベントへの参加。あとは、動物愛護法改正の署名活動に協力してもらったり…。
その都度いろんな活動をしているので、できる範囲で参加してもらえればと思います。

どんな人と一緒に暮らすかで、ペットの一生は決まってしまう

どんな人と一緒に暮らすかで、ペットの一生は決まってしまうのだということを、お話を伺いながら実感しました。

 

わが家だって、ふうちゃんに安心して楽しく暮らしてもらえるかは、わたしたち夫婦しだいです。

 

人間の都合で手放される動物たち、ひどい目にあわされる動物たちがいます。みんな幸せに、心安く生きていけたらいいのに…、というか、そうであるべきなのに、現実はそうではないということが、ずしっと心にのしかかりました。

ニワトリ
「保護ができるサイズで、感染症や危害を加える危険がなく、譲渡可能な動物は受け入れる」のがミグノンのポリシー。譲渡会にはニワトリも

ランコントレ・ミグノン

2007年より、東京都動物愛護相談センターから犬猫などの受け入れを開始。ペットサロン、クリニックが一体となった「ミグノン・プラン」で、毎月第2日曜日と第4土曜日に譲渡会を行う。今年9月、昭和女子大学人見記念講堂にて「いぬねこなかまフェス2018」を開催予定