じつに6割の夫婦がセックスレス(2016年・アンファー調べ)の時代。ESSE onlineでは読者173人にアンケートを実施し、現代の夫婦事情を探りました。

今回のアンケートに答えてくれたのは、20~50代の女性。さまざまなライフステージにいる方々でしたが、“産後レス”という言葉もあるように、出産をきっかけとして…という夫婦が増える傾向にあるようです。今回のアンケートでも「育児で疲れていてその気にならない」という女性側の意見が目立ちました。

ただその後、自然と性生活を取り戻していった夫婦と、そのままなくなっていく夫婦がいる模様。そこには、どんな気持ちの揺れ動きがあるのでしょうか。今回は、「産後レスから本格レスになりつつある夫婦」をテーマに、読者に話を聞きました。

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陽子さん(仮名・40代前半)の場合:「母であることがいちばん。もう一生しなくてもいいです」

陽子さんは30代後半で出産。子どもは未就学児が2人で、育児に忙しい日々を送っています。
レスは出産がきっかけでしたが、陽子さんにとってそもそもの行為は子どもを授かるための手段であり、2人目の子どもをつくるときも、「子どもをひとりっ子にしたくなかったから」という気持ちから、夫に応えていたのだそう。

今では夫とのスキンシップはいっさいないものの、「私たちはとても仲のいい夫婦。夫は私の意思を尊重してくれています。私にとっては今の状態が“よい関係”です」と陽子さん。

「育児が落ち着いたら、したいという気持ちが復活するのでは?」という問いかけにも、「今のところ考えられない」とのこと。育児中でする気になれない女性たちもこの意見に賛成する人が多そうですが、陽子さんは「このまま、一生しなくてもいい」とまで言いきります。

「夫のことは好きですが、もうする気にはなれないんです。私は、母であることがいちばん。『夫にいつまでも女性として見られたい』という人もいますが、そういう意味では、私は母であれば、女性でなくてもいいです」と、力強く答えてくれました。

自分にとっての優先順位を大切にした結果、レスという選択をした陽子さん。彼女自身が「価値観は人ぞれぞれ」というように、そういう生活を肯定的にとらえていくのも、ひとつの夫婦像かもしれません。

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ゆりさん(仮名・30代前半)の場合:「今のところ平和。とにかくラクなんです」

出産後レスを選択している妻たちのアンケートで目立ったのが、「現状がラクだからこのままでよい」という意見。
30代前半で3人の子どもをもつゆりさんも、そのひとりです。

もともと夫もゆりさんも積極的ではなく、交際中から回数は少なかったそう。行為=子づくりだったそうで、「ほぼピンポイントで3人とも授かりました」といいます。夫婦間でスキンシップはまったくなしで、今も「夫との関係にとくに変化はありません。別に困っていないのでこのままでいい」。

夫がよそに女性をつくったらどう思うのでしょうか?
「夫には昔、『不倫は認めないけど、もしやるならバレないように墓場までもっていく覚悟で。バレたら即離婚、自宅ローン費用と養育費はがっつりもらう』と話しています」

ゆりさんの「レスだけど悩んでいない」というスタンスは、ほかのアンケートでも目立ちます。妻は育児で疲れ、夫は仕事で疲れ、双方ともその気になれないという背景があるように感じました。

智奈美さん(仮名・40代後半)の場合:「子育てが落ち着いたとき、女性である自分を思い出しました」

今回のアンケートでは、過去にレスだったけど性生活が復活した、というケースもありました。
成人間近の子ども2人をもつ智奈美さんは、「育児中は行為がイヤでイヤでたまらなかった」というひとり。

「たぶん子育て中は自分が女というより母という気持ちが強く、男としての夫との性生活なんてもうどうでもいいと思っていたのかも」と、かつての自分を分析します。

育児中に誘われて拒否すると「夫はふてくされて、機嫌が悪くなりました」。そのギスギスした雰囲気が面倒で、実際は受け入れることも多かったのだそう。「でもイヤイヤするのは、本当に苦痛でした」

それが、子どもたちの手が離れ、おしゃれをしたりメイクをしたりする時間をもてるようになったとき、智奈美さんに変化が訪れました。「夫と2人の時間は女性である自分を意識できるようになって、また楽しめるようになった気がします」

今は、誘うのは完全に智奈美さんから。月に1度くらい、智奈美さんが夫の布団に入るのがそうする日と、夫婦の暗黙の了解になっているのだそう。智奈美さんは仕事や家事に忙しく、できるタイミングが限られているため、彼女が誘うペースで夫は満足している様子。以前と違って、したくもないのに無理してするということがいっさいないから、いい関係を保てています。

今では、「こうしたら夫は気分を害するな」ということは極力避けているのだそう。「夫をイヤになってギスギスしていたときは、ストレスがたまって体調も精神状態も悪くなっていました。当時は自分の思いにとらわれていて、もったいない時間を費やしてしまった」と智奈美さん。

だから、今はたとえ自分にその気がないときに誘われたとしても、応えるだろうとのことです。「夫婦関係はいい方が絶対いいから。ケンカをしても、セックスをすることで許す気にもなれます。だから、夫婦には必要なものだと思っています」と教えてくれました。

今回、3人の方に共通していたのは、“出産・育児”というキーワードでした。ライフステージが変わるにつれ、夫婦関係も変化していくもの。3人それぞれでしたが、どの方のお話も、多くの育児中の女性たちを代弁しているような内容ではないでしょうか。