母親の全員が、母親になる前から、子どもが大好きだったというわけではありません。和田順子さんもそんなひとりでした。母親になるまでにはさまざまな悩みがありましたが、今では、2人の男の子の子育てをとても楽しみるようになったそう。日々実感していることをESSEに語っていただきました。

2人の男の子の子育て
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2人の男の子を育て、子育てをして本当によかったと思えるようになった

母親になるまで、子どもが生まれたらどう接すればいいのか不安でした。長男妊娠中も、小さな子どもひとりあやせない私が母親になるなんて大丈夫だろうかと、心配でいっぱいでした。そんなマイナスからのスタートの私が今、2人の男の子(2009年生まれと2012年生まれ)のお母さんです。

育児は、幼稚園に入るまでがとくに大変でした。赤ちゃんのときは休みなしの24時間労働。ちょっと大きくなってもイヤイヤ期やまったく目の離せない時期があり、自分の時間がないのでかなり消耗します。でも、子ども達が小学校や幼稚園に入り、ようやく「自分」に戻れる時間を得るようになって私のなかに変化が。あらためてこれまでの自分の子育てを振り返って俯瞰できるようになった今、本当に子育てをしてよかったと思えるようになったのです。あんなに子どもが苦手だったのに!

私が子育てをしてきて、本当によかったと最近思ったこと5つをご紹介します。

●よかったこと1:長男の穏やかな姿を見て、自分もまた謙虚な気持ちに戻れる

ふたり姉妹の妹で、姉にしごかれて育った私にとって、長男のまっすぐさは理解できないことが多く、不安になることもよくありました。
たとえば、食べるのが遅い次男に対して「早く食べて!」「もうママ知らないよ!」などと私がキツイ言葉をかけてしまっていたときのこと。泣き出した次男を、私は放置していました。それを見ていた長男が、次男に優しく語りかけたのです。次男は「ひとりだけ遅れてしまったこと」「上手にお箸で食べ物がつまめないこと」が原因で食べる気が失せてしまい、食べることが遅くなることがあります。このときの私は、そんなことをうっかり忘れて声を荒げていました。

長男は、「お肉はひとりで食べられる?」「野菜は僕が半分食べてあげるね」「ここまで食べたら、あとはひとりでできる?」と次男にひとつひとつ確認しながら、食べるのをお手伝い。

早くできない子に対して「早くして」と言っても、なんの効果もありません。早くできるように手伝ってあげればよいだけでした。そんな当たり前のことを、長男はいつも教えてくれます。イライラして私が長男に八つ当たりしてしまうことだってたくさんあるのに、長男はいつだって穏やか。人ともめることが苦手で、なんとか穏やかにおさめようとする姿に、いつもハッとさせられます。

●よかったこと2:わが子が最高に趣味の合う仲間になることも

最高に趣味の合う仲間

インテリアや雑貨、ファッションが好きな私。でも夫はそのどれにもまったく興味がありません。次男が生まれる前は、3人でぶらぶらショッピングなんて皆無でした。それが今では!

私が新しいお皿を買って食卓に出すと、まっさきに反応するのは次男。「ママ、これかわいい!」。お花を飾れば次男が、「ママ、すてきだね。お花かわいい!」。めずらしくスカートをはけば、「ママ、かわいい! ぼくこれ好き!」。

絶対に気づいてくれます。男として必要な素質です(笑)。長男と夫は、私と好みが違うからこそ支えになることもあります。けれど私と違いすぎて、楽しみを分かち合えないことも。そんな部分を次男が絶妙にカバー。2人産んで本当によかったと思いました。

●よかったこと3:自分の趣味の幅が広がった

自分の趣味の幅が広がった

長男は言葉の話せないほど幼いころから電車が大好きです。もともと電車にはまったく興味のなかった私ですが、長男が好きならば、と近隣の鉄道博物館や電車区を訪れたり、冬の寒い時期にただひたすら踏切を見たり。

次男ももれなく電車好き。ふたりとも電車好きとなると、電車に乗ることが目的の旅行に出かけます。先日はJR九州の「あそぼーい」に乗るために九州を旅行しました。いかにたくさんの電車に乗って移動できるかを調べたり(ふつうは最短ルートを調べますよね)、旅行先に鉄道博物館がないか調べたり、鉄道関連のイベントをやっていないか調べたり。

旅行前は大忙しです。そして行った先で夢中になっている子ども達の姿をカメラにおさめることが、私の旅の楽しみ。以前から旅行が趣味の私ですが、おいしいものを食べる名所を訪れる以外に、新しい旅の楽しみ方が増えました。

●よかったこと4:苦手なものが克服できた

苦手なものが克服できた

次男の幼稚園は自然に囲まれ、緑豊かな場所にあります。草木や木の実、昆虫が子ども達の遊び道具になることも多く、自然と次男も虫に興味をもつように。

ところが、私は虫が本当に苦手でした。飛ぶ虫、はう虫、すべてダメ。もともと触れたのはアリくらいです。でも次男に「はい、ママどうぞ!」と手渡されたら「キャー!」なんて言うわけにいきません。私が苦手だとわかったら次男も苦手になってしまうかもしれないからです。

そうやって虫に触れるようになり、「ママ、この虫なに?」と聞かれるがまま調べていくうちにだんだんと、虫が「ただ気持ち悪いもの」ではなくなりました。理解が深まることで「次男の遊び相手」とか「害虫を食べてくれるいいヤツ」とか「かわいいけれど毒をもっているヤツ」などになり、親近感すら覚えるように。

中途半端な知識しかないものは怖いのですが、よく知ってみると意外と大丈夫なものも多いですよね。苦手の克服だけでなく、次男からはそんなことも教えてもらったのでした。

●よかったこと5:小さな感謝と喜びが増えた

日々、やりたいと思ったことの何割ができているでしょうか? 友達とゆっくり食事をするとか、子どものことを気にせずお出かけをするとか、小さな「やりたい」ことすらなかなか叶わない生活を日々送っていると、それが叶ったときの喜びもひとしおです。子どもを預かってくれる夫や、時間を合わせてくれた友人など、それを可能にしてくれた人達に心の底から感謝するようになりました。

また月並みですが、子どもの成長は本当にうれしいものです。寝返りができた、おすわりができた、おしゃべりができるようになった、はさみが使えた、文字が書けた…なにもできなかった子にできるようになることが増え、一緒に喜べる時間はかけがえのないものです。自分のこと以上に誰かのことで喜べる、誰かのために生きられる、豊かな時間を過ごさせてもらっています。

豊かな時間を過ごす

5つのよかったことを挙げてきました。とはいえ、子どもが大きくなればなったなりの心配ごとがあり、育児はやっぱり大変です。毎日ガミガミ怒ってばかりで自分が嫌になる毎日を過ごし、神様に試されているなと思うこともたくさんあります。その一方で、子どもがいてよかったと思うことも、この5つ以外にもたくさんあるものです。

試練も喜びも増え、人生の密度がぎゅっと詰まっているなと感じています。