最近増えているのが、“実家のトラブル”。「認知症の親が詐欺にあった」「ひとり暮らしの叔父の片づけを押しつけられた」など、高齢化や単身世帯の増加によるトラブルが増えています。

親や親せきとはこまめに連絡を取り、風通しのいい関係をつくって

そんな悩みにファイナンシャル・プランナーの山田静江さんはこうアドバイスします。「親やひとり暮らしの親戚とはこまめに連絡をとり、風通しのいい関係をつくることを心がけましょう。会話のなかでおかしな点や話に気づいたら、すぐ対処できます」。

また、「相手の立場にたって考える習慣をつければ、多くは回避できるはず」というのは、マナーデザイナーの岩下宣子さん。それでもトラブルになったら、弁護士の大坪和敏さんいわく「裁判所に調停を申し立てるのも、ひとつの方法。第三者に中立的な目で見てもらうことで、お互い冷静になって妥協点を見つけやすい利点があります」とのこと。

今回はESSE読者が経験した実家のトラブルの数々をモデルケースとして、3人にアドバイスをしていただきました。

●夫の実家の片づけはだれがするの?(鳥取県・38歳)

片づけが下手でムダなものがあふれている夫の実家。今は未婚の義兄が一緒に住んでいますが、夫の両親にもしものことがあったら、実家の片づけはだれがするのでしょうか?

夫の実家の片づけはだれがするの?
すべての画像を見る(全4枚) ・山田さんのアドバイス
相続人である限り自分たちにも可能性あり

夫の両親の相続人は、義兄と夫。義兄が家を相続したら義兄が片づけますが、義兄が整理しないまま暮らして亡くなった場合は、夫(夫が亡くなっている場合は子ども)が両方の遺品を整理することになります。そうなって困らないように、両親が亡くなった時点で、義兄と一緒に遺品整理をしておきましょう。

・岩下さんのアドバイス
今から親と会話して準備を進めて

実家の場合も同じですが、「片づけてくれないと困る」などと自分の都合を押しつけるのはケンカのもと。「お母さんが大切にしているものを教えて」とリストにしてもらい、片づけを進めていくように。一緒に家の中を見て回って確認するのも、親子の会話を増やしてくれるのでよいでしょう。

●親の死後、借金が発覚。返済すべき?(東京都・29歳)

知人で、親が亡くなった後に借金が発覚し、返済を迫られた人がいます。その場合、返済する義務はあるのでしょうか?

親の死後、借金が発覚。返済すべき?
・大坪さんのアドバイス
借金のみ相続拒否はNG!

相続では預貯金などプラスの財産を相続したら、借金などマイナスの財産も相続するのが決まり。プラスの財産がマイナスより多ければ、遺産で負債を返済できるので相続を。逆にプラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、両方を放棄する“相続放棄”が可能です。

●義父が亡くなり銀行の口座が凍結!葬式代はどうする?(千葉県・35歳)

昨年、義父が急に亡くなったため、お寺へのお布施20万円や、葬儀代100万円などのお金が必要になりました。ところが、義父の銀行の口座が凍結されてしまいお金が用意できず、親族に貸してもらってなんとか支払うことができました。

義父が亡くなり銀行の口座が凍結!
・山田さんのアドバイス
葬儀にかかった費用の領収書は保存して!

口座は名義人の死亡がわかった時点で、相続財産として凍結されます。銀行によっては葬儀費用なら、簡単な手続きで引き出させてもらえるケースも。相続人が複数の場合は、あとでもめないように、必要額を相続人全員に通知し、葬儀代などの領収書は保存しておくこと。ただし、相続放棄するなら引き出さないように。口座からお金を動かすと相続を承認したこととなり、相続放棄することができなくなるからです。

・大坪さんのアドバイス
必要なお金は事前に確保しておく

凍結されたあとに預貯金をおろすには相続人全員の協力が必要になります。その手間を避けるため、なにかあったときに備えてキャッシュカードを預かれるよう両親と話し合うなどして、病院の費用や葬儀代などの必要なお金を確保できるようにしておくとよいでしょう。

●父がだまされてお金を振り込んでしまったら?(大阪府・40歳)

父が悪徳投資サイトにお金を振り込んでいたことが発覚! すでに3万円振り込んでおり、さらに30万円も追加しようとしていましたが、説得してやめさせました。これがきっかけで、認知症の症状が出ていることも判明しました。

父がだまされてお金を振り込んでしまったら?
片づけ、借金、悪徳サイト…を解決!【実家のトラブル】お助けガイド

・山田さんのアドバイス
期間内ならクーリングオフも可能

一定期間内なら、クーリングオフで契約解除できます。解除できない場合や悪質業者の場合、国民生活センターの相談窓口(全国共通の電話番号「188(いやや!)」)や警察に相談を。また、だまされるのは、話し相手がいないさびしさが原因の場合も。まめに連絡をとったり、会いに行って、様子を聞いてあげる心配りも大事です。

・大坪さんのアドバイス
成年後見制度の利用も視野に

認知症で財産管理に問題があるなら、成年後見制度を利用しましょう。家庭裁判所が定めた後見人が財産を管理し、お父さんが悪質な投資サイトと契約しても無効にできます。一方、軽度の認知症で日常のお金の管理ができるなら、法律は関与できません。預金通帳などを預かれるよう、お父さんと話し合って説得を。

いかがでしたか?
今回アドバイスしてくれた3名は、

ESSE8月号

でも登場。家族やご近所にまつわるさまざまなトラブルの解決法を教えてくれているので、こちらのチェックも!

●教えてくれた人

【大坪和敏さん】

弁護士。東京弁護士会、馬場・澤田法律事務所所属。相続、借金、金銭トラブルなどに親身に答えてくれる。ご近所トラブルに関する著書もあり、雑誌などのメディアでも活躍中

【山田静江さん】

ファイナンシャル・プランナー。銀行や会計事務所などの勤務を経て、独立。安心して暮らせるプランニングをモットーに、執筆、講演、セミナー、相談業務などを行う。『

相続のきほん

』(オレンジページ刊)など著書多数。

【岩下宣子さん】

マナーデザイナー。現代礼法研究所代表。企業、学校、公共団体などでマナーの指導、研修、講演と執筆を行う。近著に『

DVDで身に付く美しい振る舞いとマナーがわかる本

』(エクスナレッジ刊)など