無関心、支配、嫉妬、過干渉…。こうして子どもを不幸にしてしまう親たち、つまり「毒親」に苦しむ女性が増えています。編集部にも、こじれてしまった関係に苦しむ声が続々と届くように。今回はそんななかから、毒親のために結婚までめちゃくちゃになってしまった1人の女性のエピソードを紹介します。

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毒親に苦しむ女性

小泉礼奈さん(仮名・34歳)
DATA
●夫家族構成…2年前に離婚
●実母の年齢…60歳
●子どもの頃から母は妹だけをかわいがり、自分は嫌われていると感じていた。母は一見「いいお母さん」だが、陰湿なイジメがあった。2年前に結婚するが、夫と母が意気投合し、2人で連絡を取り合うようになってしまったために離婚

「よい子にするため」と私を痛めつける母の手。そこから逃げることはできませんでした

 右手の甲の親指のつけ根の辺りに残る小さなやけどの痕。これを見るたびに私は、母の顔色ばかりうかがっていた幼い頃を思い出します。母は、とびっきり愛らしい容姿をもって生まれてきた妹を溺愛し、私のことを徹底的に嫌いました。私は母の機嫌を損ねないよう、いつもびくびくしながら暮らしていました。

 母は、よく気がつく、よい子が大好きなのです。洗濯物をたたんでいる母を目にしたら、駆け寄って「お手伝いします」と申し出るような子が。家事をする母を横目に通り過ぎようものなら、大変なことになる。でも、教師だった母は、体罰などという「悪いこと」は絶対にしません。巧妙に確実に娘を痛めつけるのです。「手を出しなさい」と有無を言わさぬ調子で短く言い、もぐさに火をつける。それを見ただけで噴き出してくる脂汗。もう逃げることはできません。母は私の手を強い力で押さえつけ、表情を変えずに手の甲にお灸を据えるのです。私をよい子にするために。

私不在の家族旅行。そんな私の目の前で、アルバム整理をうきうきとする母

 同じおなかを痛めた子どもでも、母は私のことだけが憎かったようです。これは理屈ではなく感情的なものなのでしょう。だからなにをしてもダメ、私の存在自体が気に入らない。それでも小学校低学年の頃までは、愛されたくて、母にお花を買ってきて気を引こうとするなど、いじらしい努力をしましたが、いつの間にかすっかりあきらめてしまって。

 夫婦仲はたぶん悪かったのだろうと思います。ただ、父はほとんど家にいなくてあまり記憶がありません。味方になってくれなかったから父のことも嫌いでした。夏休みの間じゅう私のことだけを遠方に住む母方の親せきに預け、妹と父と母の3人で家族旅行に出かけるんです。家に帰ると微妙に空気が違ってどこか華やいでいるんです。母がうきうきした表情で家族旅行のアルバム整理なんかをし始めて。わざと私の目の前で。

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そんな母に恋人が!家を出てくれたときは、うれし涙がこぼれました

 小学5年のとき、母が恋人をつくって家を出てしまいます。このときは、うれしくて涙が出そうでした。ところが、父と離婚してからも、溺愛している妹がいるものだから、たびたび家には出入りして、私の行動をいちいちチェックし、文句を言いました。この状態が何年も続くと本当にイヤになってしまって。いつの頃からだったかな、こんな人死ねばいいのに、と思うようになったのは。

 一昨年、仕事を通じて知り合った人と結婚することが決まりました。結婚は、たぶんずっとしたかった。母には、婚約直後に夫と一緒に報告に行きました。そしたら、なんと夫と母が意気投合し、2人で連絡を取り合うようになってしまったんです。彼には母とうまくいっていないこと、距離をおきたいと思っていることは、伝えてありました。それなのに、どんどん親密になり、結婚後は、母が家へ泊まりに来るようになって。夫は、私と母との関係は、私の努力で修復すべきと考えているようでした。まったくなんにもわかっていない。結局、夫が母の家に1人で泊まりにいってしまったことをきっかけに、離婚を決意。結婚して半年、もう精神的に限界でした。

大嫌いな母が望むような男を知らず知らず夫として選んでしまった私

 離婚したことを、母に電話で伝えるとブチ切れて、「あんなにすばらしい人が、結婚してくれたのになにやってるの」「そもそもあんたなんかに釣り合う人じゃなかった」と。私はこの電話で母に絶縁を宣言。以来、いっさいのやりとりをしていません。

 それにしても、なぜあの男と結婚したのか。それは今こうして振り返ってみて、はっきりわかりました。元夫は、母が大好きな、高学歴で大手広告会社勤務のエリート。私ったら、母が気に入る男を自然に選んじゃった。そして、「お母さん見て、あなたの大好きなこんなに優秀な男と私は結婚するのよ」と見せつけたかった。だからこそ、大嫌いな母のところに、2人そろって、のこのこ結婚報告に出向いたのです。

 母は母でそんな私に嫉妬し、幸せをつぶしにかかった、ということなのでしょう。こんな私は、これからいったいどう生きていけばいいのか…。大嫌いな母の呪縛から逃れる方法を教えてもらいたいです。

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 編集部独自のアンケート調査では、小泉さんのように実際に実母と断絶したり、一度でも断絶を考えたりしたことがある人は42%。関係を断ち切ることが、現実味を帯びた選択肢になっていることが伺えます。その方法は、「ひとり暮らしを始める」「結婚を機に家を出た」「遠くに引っ越した」「電話に出ない」「すべての連絡を絶つ」などでした。とにかく実母との距離をとりたいと考えているのでしょう。