きちんと知っておきたい婦人病のこと。症状と治療方法について、医師にうかがってみました。今回取り上げるのは乳がんについて。

正しい知識を得て納得のいく治療法を選ぼう

正しい知識を得て納得のいく治療法を選ぼう
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「日本では乳がんの罹患率も死亡率も右肩上がりの状態」と眉をひそめるのは昭和大学病院 乳腺外科の中村清吾先生。その背景には、食生活の欧米化や、晩婚化、出産しない女性の増加などがあるそうです。

「その一方で、乳がんは発見さえ早ければ、ほぼ治せる病気。毎年検診を受けていれば、7~8割は、2cm以下で転移のない早期のうちに発見できます」。

 1000人が乳がん検診を受けた場合、現在50人程度に異常が見つかり、うち3人ががん。運悪くがんが見つかってしまったら、情報を集め、正しい知識を得ておくことが大切です。「乳がんにはさまざまな療法があり、個々の症状や再発リスクに応じてきめ細かな選択肢があります。主治医と相談しながら、自分が納得できる最善の治療法を目指しましょう」。

女性がかかるがんトップ5

 乳がんは女性がもっともかかりやすいがん。ただし、罹患率は1位でも死亡者数は、大腸がん、肺がん、胃がん、膵臓がんについで5番目。つまり治るがんであるということができます。

(※大腸がんは結腸がんと直腸がん、子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんを合わせた件数)

<症状>乳房のしこりで自己発見できることも

 発見の手がかりになる症状は乳房内のしこり。乳頭から血の混じった分泌物が出ることも。乳頭に発症するがんは、湿疹やびらんが見られる。一般に痛みはないといわれるが、なかには痛むものも。また、皮膚にえくぼ状のくぼみができたり、皮膚が赤く腫れることもある。なお、しこり自体には良性のものも多い。

<検査>マンモグラフィー検査のほかに細胞診をすることも

 まず視触診、次いでマンモグラフィー検査をするのが一般的。若くて乳腺が発達しているとマンモグラフィーの画像では見分けがつきにくいため超音波検査も併用。がんが疑われたらしこりに針を刺して細胞の一部をとって調べる針生検を行う。悪性であればホルモン剤が効くタイプかどうかなどの性質も調べられる。

<治療法>切除手術が中心。術後は放射線照射で再発予防

 中心となるのは手術。切除する範囲により、乳房部分切除術と全乳房切除術などがある。乳房部分切除術後は放射線照射で再発を予防。進行して大きなしこりになっている場合は、先に抗がん剤を投与することもある。術後は、微小ながんの転移に備えて抗がん剤やホルモン剤を投与して再発を防ぐ。

中村清吾先生
中村清吾先生

【中村清吾先生】

聖路加国際病院の外科管理医長、同ブレストセンター長、乳腺外科部長などを経て、2010年より昭和大学病院ブレストセンター長、乳腺外科教授。著書に『

乳がんの正しい治療がわかる本

』(法研刊)などがある

【昭和大学病院 乳腺外科】

住所:東京都品川区旗の台1-5-8 TEL:03・3784・8000