キッチンをつい自分だけがわかるようにしていませんか? 家事シェアが広がる今、キッチンを誰もが使える場所にしておくことが大事、と教えてくれたのは50代ブロガーの中道あんさん。
息子さんと二人暮らしをする中道さんに、家族が共有しやすいキッチンのシンプルなルールを教えてもらいました。
台所は女性の城にはしない。家族との共有スペースにする工夫
わが家は10畳ほどのダイニングに幅2.5メートルのI型システムキッチンを設置。窓の上に4枚の吊戸棚があります。この限られた空間に調理器具・食器・調味料を保管しています。息子と二人暮らしの小さくなった家族。わが家ではキッチンはシンプルでスマートな共有場所を目指しています。
●かつて台所は女の城だった
子育て中は、ケーキをつくったり、パンを焼いたり、大皿料理をつくったりとキッチンに立つ時間も長かったです。「台所は女の城」と言われているように、かつては自分のお城でした。
母と同居をしていた時期もありましたが、キッチンに立たれるのは、なんとなく嫌でした…。使ってくれてもいいけれど、私のルールに従って欲しいと思っていました。実際、そんな都合のいいようにはいかないので、母が使ったあとは、鍋が焦げていたり、道具の収納場所が違うだのと、イライラしたものです。この原因はやっぱりルールの共有不足だと思います。
●飯炊き女から卒業した今
自分のお城はキッチン。いつまでもその場所をひとり占めてしていてもなぁ…と思うようになったのは最近のことです。
家事が本業で、手の空いている時間に仕事をしているのならともかく、日中のほとんどが仕事の時間。気がつけば、キッチンに立つよりも、もっと別なことに時間を費やしたいと思うように…。飯炊き女を卒業して、ひとりの女性として生きていきたい。そのためには、キッチンは家族共有の場所であることが条件ではないかと思います。管理責任者は私ですが、誰もが使える場所にしたいと思いました。
●ルールがわかれば、守ってくれるもの
ずいぶん昔の話になりますが、OL時代は50人ほどの男性社員のために庶務の仕事をしていました。書類を留めるためのホッチキスやセロテープなどは、職場に1、2個しかなく、いつも「あれ、どこにいった?」と聞かれることがよくありました。使った人が元の場所に戻してくれればいいのですが、使い放しでした。そこで文房具トレイをつくり、底面にアイテムごとに太マジックで形を縁どりました。
枠のなかに、文具名を書き記す。すると、圧倒的に文房具の放置が減って、しかも枠に合わせて戻してくれるようになったのです。
男性はルールが決まっていれば、その通りに守ってくれますが、細かなことにまで気が回らない人が多いように思います。あくまで個人的な見解ですが、これは、ものごとを完成させるのにプロセスも大事にする女性との違いなのかもしれません。もちろん男女問わずいろんな性格の方がいて、たとえ家族であっても価値観はそれぞれ違います。調理道具や食器のこだわりや、その使い方のこだわりを共有するのは難しいものです。だからこそ、共有するならシンプルに…。
男子厨房に入らず、なんて今時はもう古い! ですよね。
●台所は共有スペース。誰もがわかるシンプルなルール
そこで、息子と共有スペースの台所のルールは
・道具類はスタンダードなものだけにする
・1アイテム1つしかもたない
・水きりかごは使わない
・調味料はベーシックなものだけ
・汚れた食器はシンクに置きっぱなしにしない
など家事に不慣れな息子でもスマートに使えるキッチン収納にしました。
生活をしていて、ふと気がつくと繰り返し同じものを使っているなと思うことがあります。
例えば食器は、お気に入りの1軍、たまに使う2軍、行事にしか使わないスター…など用途や役割ができています。ですが、もう2軍は処分して1軍だけを持つことにしました。というのも、普段キッチンに立っているからこそ、食器の使い分けができます。そうでなければ「何を使えばいいのだろう?」と迷ってしまうものです。するといちいち「これ使ってもいい?」と聞かれることになり、それがストレスになるからです。
調理道具などもそうです。例えばザルやボール1つとってみても、数を持ってしまうと、あれこれ使って気がつけばシンクの中は洗いものの山…ということになりかねません。1つしかなければ、洗いながら調理をすることになるので、スペースを取らず効率的に調理できるようになります。便利グッズやこだわりの道具類はもたず、調味料などもベーシックなものだけ、必要最小限にすれば、引き出しの中もごちゃごちゃしません。
1つしかなければ、何を使えばいいか迷うこともなく、スマートに調理ができます。
出したらしまうクセをつけるために、水きりかごも処分。洗った食器を戻さずにカゴが保管場所になりそうだったからです。代わりに省スペースな折りたたみ式の水きりラックなら、使わないときはクルクルと巻いて収納できるのでキッチンがスッキリします。
キレイに使って欲しいと願うよりも、自然にそうなるキッチンづくりを目指すことで、今のところ、食器や道具類が見当たらなくなったりすることはありません。
ある朝のこと。夜遅く趣味の釣りから帰ってきた息子が釣果をさばいたようでした。鯛の鱗が流し台の前のタイル壁に飛び散っていましたが、これくらいは大目にみようと思いました。ガチガチのルール決めをして甘さもなくなってしまうと、お互いにストレスになりますからね。
◆中道あんさんのインタビュー記事はこちら◆
50代で「ソロ活」にハマった。主婦を経て初めて感じた自立の楽しさ 結婚22年目で別居、50代のひとり時間。後悔のない人生のためにしていること 50代からの毎日を応援する記事多数! 「これからの暮らし by ESSEonline」はこちら【中道あん】
著述家、ブロガー。1963年、大阪府生まれ。26歳で結婚し、2男1女を授かる。家事と育児、お小遣い稼ぎの仕事とママ友ライフを幸せに送るが、やがて子どもの成長とともに自分自身の将来に目を向けるようになり、正社員として働き始める。結婚22年で夫と別居。2019年正社員から「自分らしく生きたい女性のための発信塾」を起業。4歳になるイングリッシュコッカースパニエルと日々の暮らしを楽しんでいる。ブログ「
女性の生き方ブログ! 50代を丁寧に生きる、あんさん流」主宰。著書に『
50代、もう一度「ひとり時間」』(三笠書房)がある