●10年後の親の住まいは予測不可能?
すべての画像を見る(全3枚)住む家についても、親子でどのように話し合うべきか、悩みどころです。
「親の終の棲家は、今の家に住み続けるか、施設に入るか、利便性が高くコンパクトなマンションに住み替えるか…。それもやっぱり、本人の希望が第一。
そのうえで、心身の症状など諸事情も考慮しなければなりません。例えば家で倒れて救急措置が必要になったら、家に居続けることは難しいですよね。家か病院かは、本人の希望以上に、その人が死ぬか生きるか長引くか、症状にもよるんです。
在宅医療の体制が整っていない地域では、医療従事者が常駐している施設の方が心強いでしょう。何よりも『かかりつけ医』を決めておくことです。高齢者の死亡は、交通事故よりもお風呂場での溺死や階段などからの転落死が多いので、死亡診断書を書いてもらえる点でも安心です。
長年住み慣れた家で死にたいという親世代の気持ちはよく分かります。ですが、体調によっては住み慣れた家で楽しみながら老いられるか。そして老いていく人が乱暴になったりせず穏やかに老いていけるか。もし親と子が離れて暮らしているなら、親は自宅で年中誰かにつきっきりで世話をしてもらうことも叶わないでしょうから、孤独に耐えうる覚悟も問われます」
とはいえ、老い衰えた時の状況や心境は、当人でさえもわかりません。
「かくいう私も、老後は高級老人ホームで悠々自適に余生を送る予定でした。ところが、自宅の老朽化が進み、近所に迷惑がかからぬようにと老後資金をはたいて戸建てを建て替え、この家に住み続けることになりました。これは親である私も、娘にしても、とんだ誤算でしたね(笑)」
親子関係も、居心地のいい住環境も、時とともに変わっていくもの。そのことを念頭に、柔軟に動けるようにしておくことが最大の準備といえるでしょう。