オリジナルの木枠のガラス戸が印象的なS邸。キッチン横の掃き出し窓が並ぶ壁一面に設置しました。Sさん夫妻が好きな「京町家」がイメージの元になっています。20年ほど前に新築でこちらのマンションを購入したSさん夫妻は、内装や水回りの傷みをきっかけにリノベをおこない、「京町家」のエッセンスをあちらこちらに取り入れながら日々感じていた住まいの悩みも解消しました。さっそく生まれ変わった住まいを見せていただきましょう。
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雰囲気たっぷりの木製建具は、結露の解消や遮音にも効果大!布団派だから寝室は和室。LDK隣接でフレキシブルに使える場所に2つ設けたWICのおかげで、衣装持ちでもすっきりマンションなのに窓のある浴室が実現!間取り(リノベ前後)雰囲気たっぷりの木製建具は、結露の解消や遮音にも効果大!
おいしいものを求めて京都へ旅するのが好きで、現地の料理屋や旅館の内装を見るのも楽しみという夫妻。京町家の雰囲気を住まいに取り入れるべく、LDKの既存サッシの内側にオリジナルのガラス戸を設置しました。
当初は格子のサイズをもっと小さくして、様々なガラスをはめ込むことも考えたそうですが、担当デザイナーから「少しうるさくなってしまうかも」とアドバイスをもらい、現在のシンプルな形に。モルタルやアイアンなど、夫の希望で取り入れた無骨な要素と、京町家の風情がうまく融合しています。
「すりガラスからやさしい光が入るだけでなく、結露や音の問題も解消されました」(夫)
室内には引き戸を多く採用し、家全体がオープンにつながる開放的な間取りを実現しました。洗面室と浴室には、キッチンからもリビングダイニングからもアクセスできます。床にはタモ無垢材を採用しました。
「厨房のようにしたい」という妻の希望に合わせて造作したキッチン。シンク側には扉をつけなかったことで作業効率がアップし、コストダウンにも成功しました。正面の白い引き戸の奥は洗面室&浴室です。
キッチンの背面側の壁には、依頼したリノベ会社「リノキューブ」のショールームでひと目ぼれしたブリックタイルを採用。甘くなりすぎないように目地をグレーにしたのがポイントです。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫50歳 妻49歳
▼リノベを選んだ理由
新築で購入したマンションに暮らしていたSさん夫妻。20年を経て水回り設備や結露による壁の傷みが気になるようになり、3社に見積もりをとって、きめ細かな提案とショールームのデザインに惹かれた「リノキューブ」にリノベを依頼した。
▼住宅の面積やコスト
専有面積/63.37㎡ 工事費/1300万円(税、設計料込み)
布団派だから寝室は和室。LDK隣接でフレキシブルに使える場所に
「寝るときは布団派」のというSさん夫妻の希望により、以前和室だったスペースをリビングと一体になった畳敷きの寝室に。縁なし畳がフローリングとフラットにつながり、洋風の空間に似合う開放的なスペースになりました。
畳コーナーの引き戸の奥は、玄関横のウォークインクローゼット。玄関とLDK側をつなぐ動線が2つになり、回遊できる間取りがとても便利です。「風が通り抜けて、夏はエアコンなしでも涼しい」と妻。
上部にはオープン棚を設置しました。梁をはさんで、奥はウォークインクローゼット側から使う収納スペースになっています。梁の存在感を弱めつつ、収納スペースを広げられた一石二鳥のアイディア。
2つ設けたWICのおかげで、衣装持ちでもすっきり
こちらは、畳コーナーと玄関をつなぐウォークインクローゼットの内部の様子。リノベで回遊できる動線ができ、取り出しやすく片づけやすい収納スペースができました。夫婦ともに洋服や靴が好きで、量も多いことから、事前にどれくらいの量があるかを伝えてプランに生かしてもらったそう。玄関土間を介した反対側には、もうひとつウォークインクローゼットを設けています。
「京町家」の雰囲気を取り入れるため、ぜひ採用したかったのが玄関土間。「自転車もそのまま入れられて便利です」と夫。古材の突板パネルで仕上げた壁面には、スチールの棚板を取り付けてオープンな靴収納に。
玄関の左右にあった個室は、2室ともリノベでウォークインクローゼットに変更。以前は婚礼ダンスなどに占拠されて納戸状態だったそうで、さらに結露にも悩まされていたとか。ドアのないウォークインクローゼットに変更し、便利な回遊動線と風通しのよさが実現しました。
玄関を入って左手のウォークインクローゼット。左右にハンガーパイプと枕棚を設置し、床から天井までたっぷり収納に活用できるようにしてあります。正面の窓の奥はなんと浴室。風通し確保のために、ウォークインクローゼットとの間に窓を設けました。
マンションなのに窓のある浴室が実現!
浴室は、壁の仕上げの自由度が高いハーフユニットバスを採用。モルタルとネイビー&白のモザイクタイルで個性的に仕上げました。
「窓があるので、マンションのお風呂じゃないみたいですよね。旅館の客室にあるお風呂のような気分を味わえます」(妻)
洗面台は鉄脚を使ってオリジナルで制作したもの。ボウルの両サイドにゆとりがあり、手入れがしやすく使い勝手もいいとか。壁の水がかりに採用した浴室とおそろいのタイルが、シンプルな空間のアクセントになっています。
壁をシックなネイビーに塗装したトイレ。ちょっとした物が置けるニッチにも浴室&洗面室と同じタイルを貼りました。出入り口はスペースを有効に活用するために、ドアから引き戸に変更。
大好きな京町家の雰囲気をうまく取り入れながら、長年悩まされてきた結露の問題も解消。夫は対面キッチンのカウンターテーブルで日本酒を飲むのが、妻は畳コーナーでごろんとするのが至福の時間だそう。「料理屋さんや旅館に出かけたような雰囲気を、家にいながらにして味わえる」(夫)と、大満足のリノベとなりました。
間取り(リノベ前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計・施工/リノキューブ 名古屋市を中心にマンションや戸建て、店舗などのリノベーションを専門に手掛ける一級建築士事務所。施工実績も豊富で、中古物件探しからデザイン、アフターサービスまで、ワンストップで専任スタッフがサポートする。リノベーション完成見学会、中古×セミナー(ショールーム、無印良品、揚輝荘etc.)など多彩なイベントも随時開催している(予約制)。撮影/水谷綾子 ※情報は「リライフプラスvol.23」取材時のものです