相続が発生したとき、一番の難題は実家の土地や建物はどうしたらいいかということ。相続すれば税金や維持費が重くのしかかってきます。「空き家を放置するのはリスクがあります。相続の前に実家の状況や不動産価値を見極めることが大切です」と話すのは、FP2級の資格を持つ海田幹子さん。今回は住む予定のない実家を相続した場合としなかった場合、それぞれの対処法について教えてもらいました。
すべての画像を見る(全4枚)空き家を放置するのはリスクがある!固定資産税が最大6倍になることも
空き家を放置すると以下のようなリスクがあります。
- 固定資産税や修繕費、管理費など、維持管理するためにコストがかかる
- 人が住まなくなると、建物の老朽化の速度が早まり資産価値が下がる
- 老朽化や自然災害などで建物が倒壊すると人にケガをさせる可能性がある
- 景観や衛生面などの悪化により周辺住民や行政からの注意を受ける
- 税制優遇措置から外れて固定資産税が高くなることがある
「住む予定がないから」「今住んでいる場所から遠いので」などと、相続した不動産の管理をしないことはNG。空き家を放置してしまうと、様々なリスクがあると覚えておきましょう。
きちんと管理がされず、倒壊や保安上の危険があると見なされたときや、衛生上有害な状態と判断されたときは「特定空家」に認定され、固定資産税が最大6倍に増額されてしまう可能性もあります。
実家として住宅が建っている土地には、固定資産税評価額が以下のように軽減されます。
住宅の固定資産税評価額
- 固定資産税=評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)
- 200㎡以下の部分:固定資産税評価額×1/6
- 200㎡を超える部分:固定資産税評価額×1/3
しかし特定空家に認定されてしまうと、軽減がなくなってしまうのです。
では、固定資産税評価額の軽減がある場合とない場合でどのくらい負担が増えるのか見てみましょう。
建物評価額100万円・土地評価額1000万円の不動産の固定資産税
- 固定資産税評価額の軽減がある場合 100万円×1.4%+1000万円×1/6×1.4%=約3万4333円
- 特定空家に認定された場合
100万円×1.4%+1000万円×1.4%=15万4000円
上記の場合、評価額の軽減がある場合とない場合では、年間約11万9667円もの差がでました。特定空家に認定されると、固定資産税の負担が上がってしまうので、空き家は放置せず、適切に管理しましょう。
住む予定のない実家を相続したときの対処法3つ
住む予定がない場合は、実家を手放すか活用するかが選択肢に挙げられます。
対策1.賃貸に出す
借りてくれる人がいるなら、賃貸に出すことが可能。家賃収入が見込め、人が使うことで建物の老朽化のスピードが遅くなるというメリットがあります。
対策2.売る
住まない不動産を持っていても維持費がかかり続けるため、地価が上がる見込みがなければ売却もあり。立地や空き家の状態などにより買い手が見つからない場合は、実家の近くに住む親戚や住民に低額で売却、または無償譲渡も選択肢のひとつになります。
対策3.寄付する
土地は自治体に寄付をすることも可能です。ただし寄付できる土地は、自治体にとって有用な不動産に限られるため、買い手が見つからない不動産を寄付することは難しいかもしれません。
買い手がつかなさそうな不動産…相続前なら放棄できる!
基本的に所有している土地は売却や寄付をしない限り手放すことはできません。ただし、これは「所有」している場合のこと。相続前なら相続放棄をすることで土地の所有権を放棄できます。買い手がつかなさそうな不動産の場合、検討する余地はあるでしょう。
注意しなければいけないのは、不要な土地だけを放棄し現金だけを相続することはできないということ。相続放棄をするならすべて放棄しなければならない、ということを覚えておきましょう。
土地の所有権がない=固定資産税を払わなくていいということ。ただし、相続放棄をしたあとも、土地の管理義務は残ります。管理義務からも免れたいときは、土地の管理を代わりに行ってくれる相続財産管理人の選任が必要です。
相続財産管理人の申し立ては家庭裁判所で行います。申し立てにかかる費用は、収入印紙や郵便切手、官報公告料など。それにプラスして、相続財産管理人の経費や報酬にあたる予納金が必要です。予納金は裁判所が決定し、数10万程度の場合もあれば100万円ほどになることもあります。
相続財産管理人が決まってはじめて、土地の管理義務から解放されることになります。
住む予定のない実家などの不動産は、賃貸や売却、寄付をしない限り、固定資産税や管理費などの費用がかさみ続けます。一度取得した土地は、基本的に放棄することはできません。
相続する実家に不動産価値がなく買い手がつかないと判断した場合は、相続の際に「相続放棄+相続財産管理人の選任」により手放すのもひとつの手でしょう。
●教えてくれた人/海田幹子さん
ファイナンシャルプランナー2級の資格を持つwebライター。ライフプランニングや住宅ローン、資産運用などお金にまつわる内容を多数執筆。私生活では2児の母。わかりやすくてためになる記事を心がけている