「冷やかし程度に」見学したというオープンハウスは、眺望のよい築33年の戸建て。相模湾や富士山が見えるこの家に、Sさん夫妻は思いがけず魅了されることに。購入、そしてリノベーションすることにしました。LDKはより眺めのいい2階に移動。妻が中国茶教室を主宰していることもあり、リビングはまるでギャラリースペースのよう。日常と非日常がほどよくミックスされた空間で、夫妻の新しい暮らしが始まりました。
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ダイニングでは中国茶教室のレッスンも。非日常を味わえる工夫を富士山を望めるコックピットのようなキッチン「堂島ホテル」のようにクラシカルな寝室玄関まわりはドアで雰囲気を統一間取り(リノベーション前後)ダイニングでは中国茶教室のレッスンも。非日常を味わえる工夫を
中国茶教室のレッスン場所にもなるダイニング。「生徒さんに非日常の時間を楽しんでもらいたい」という思いから、生活感を感じさせるテレビやキッチン用品が見えないように間取りを工夫しました。
また、LDKのある2階は天井板の一部をはずし、小屋組みを大胆に見せています。以前から愛用しているテーブルと、現しになった木部の色が見事にマッチしています。
仕切り壁の裏には壁かけのテレビを設置。仕切り壁に隙間を設けたことで、圧迫感が軽減されています。
リノベーションを機に、夫婦それぞれが好きな椅子を新調したそう。リビングでは夫セレクトのレザーのバタフライチェアがアクセントになっています。妻がセレクトしたのは、ダイニングに置いてあるイームズのプライウッドダイニングチェア。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫38歳、妻38歳
▼リノベを選んだ理由
ネットで物件情報を見るのが好きな夫が、偶然見つけて「冷やかし程度に」内見したところ、富士山の見える眺望などに魅了された。
▼住宅の面積やコスト
敷地面積/132.74㎡ 延床面積/84.46㎡
富士山を望めるコックピットのようなキッチン
以前は納戸だった場所がキッチンに変身。システムキッチンにはあまりひかれず、余白を残したキッチンをデザインしてもらいました。
キッチン収納はフレキシブルに使えるようオープンに。上部だけペイントを施したラワン材の扉の中には、茶器をしまってあります。
ワイドな窓の向こうには気持ちのいい景色が広がります。ふたつ並んだ掃き出し窓の間にFIX窓を新設したことで、キッチンで作業をしながら富士山を眺められるようになりました。
「堂島ホテル」のようにクラシカルな寝室
「大阪・堂島ホテルの重厚でクラッシックな雰囲気が好き」というふたりの希望を取り入れた寝室。
左側のレトロモダンな雰囲気を醸し出す扉の先はクロゼットで、木枠に籐を組み合わせたオリジナルです。夫妻ふたり分の衣類のほか、仕事で月2回以上飛行機に乗るという妻のスーツケースも収めています。
そして寝室の一角は妻のためのスペース。「僕の書斎になる予定のコーナーが、気付いたら妻のドレッサーに(笑)」と夫。
玄関まわりはドアで雰囲気を統一
外観には手を入れませんでしたが、建物にマッチしていなかった玄関ドアだけはオリジナルのものに変更をしました。
また、玄関の下駄箱も既存を生かしつつ、引き戸のみ交換。玄関ドアと同じく、白×ダークブラウンというS邸の内装のテーマカラーで統一しました。
玄関の先には、ホテルをイメージしたモダンなドアが並ぶ廊下が続きます。浴室のドアには「026」(おふろ)など、ナンバープレートは遊び心のある語呂合わせで選びました。また、廊下と水まわりの床は商業空間のようなイメージでPタイルを採用。「掃除がとても楽なんです」と妻は話します。
玄関と廊下については、「住宅という日常的な感覚のなかで、少し違和感を感じるようなモーテルホテルのような空間」という提案だったのだそう。
特に新居を探していたわけではなかったSさん夫妻を魅了した、「窓から富士山が見えて、空気もきれい」というこの住まい。ふたりは初めて住む葉山という土地で、日常のなかに非日常が見え隠れする暮らしを満喫しています。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計/SURE SiGN 宮川清志
かかわる人やものがハッピーになれる、確かなきざし(=SURE SiGN)を提供することがモットー。アパレルブランドや飲食店の店舗デザイン、オフィスデザインを中心に、家具&プロダクトデザインなども手掛ける
撮影/水谷綾子 ※情報は「リライフプラスvol.36」取材時のものです