建築家・大内久美子さんの住まい兼仕事場は、約47㎡のL字型の空間。玄関とLDK、LDKとワークスペースを扉で仕切らずに、つながりをもたせたプランです。通路でもある廊下をワークスペースに活用したり、必要な場所に必要なボリュームの収納を設けたりと小さな工夫を積み重ね、コンパクトでものびのび暮らせる住まいを実現しました。
すべての画像を見る(全15枚)目次:
L字型を生かしたつながりと広がりのある間取りに「しまう」場所をきちんとつくつり「暮らす」場所はスッキリ寝室には収納力大の小上がりベッドを造作洗面台の脇やトイレにも!適所適量の収納を設けた水回り間取り(リノベーション前後)L字型を生かしたつながりと広がりのある間取りに
独立を前提に住まい兼仕事場を探していた大内さんが見つけたのは、L字型で窓が多い小規模マンションの一室。「戸建て感覚で暮らせそう」と一般的なマンションにはない可能性を感じ、L字型を生かした「LDK、仕事場、寝室を自然につなげる」プランでリノベーションを施しました。
LDKと寝室をつなぐ、一見廊下のような仕事場は、光や風を感じられるうえ、左右に視線が抜けて気持ちよく仕事ができます。
仕事場とLDKの間に仕切りはなし。「LDKから奥に行くほどプライバシーの度合いが高くなりますが、扉を開放していても、LDKからは寝室も浴室も見えません。自然にプライバシーが確保できているので、閉鎖的にならずにすみますし、全体の広さを常に感じていられるんです」と大内さん。
ダイニングキッチンの床には40㎝角のタイルを貼り、キッチンとテーブルは耐水性もある左官材・モールテックスで仕上げました。キッチンを移動するために床を15㎝上げて配管し、この段差を生かしてサンクンリビング(リビングスペースが他よりも一段低くなっているリビング)に。
変形のダイニングテーブルは壁と柱の形状に合わせて造作したもの。キッチンの奥には冷蔵庫、キッチン本体の側面には炊飯器や米などを収納していますが、リビングダイニングからは死角になるのでスッキリ見えます。
ダイニングにできた壁厚の差を利用して食器棚も造り付けています。また、テーブルの下には引き出しをつくり、カトラリー収納に。引き出しはテーブルの両側にあり、もう一方には薬など普段よく出し入れするものを収納。隙間スペースをムダなく活用しています。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
本人 42歳、夫 41歳
▼リノベを選んだ理由
大手リフォーム会社に勤めていたが、独立を考えた時に住まい兼仕事場として物件探しを始めた。
▼住宅の面積やコスト
専有面積46.86㎡ 工事費800万円(税込み、設計料別)
「しまう」場所をきちんとつくつり「暮らす」場所はスッキリ
玄関とリビングは扉なしでつながっていますが、間取りを工夫したので玄関から室内はあまり見えません。
玄関を入ってリビングと反対側にはウォークインクロゼットを設置。可動棚やハンガーパイプで衣類を収納しているほか、スーツケースなどの大きなものもまとめています。「しまう」場所をきちんとつくっているので、「暮らす」場所に物がはみ出しません。
寝室には収納力大の小上がりベッドを造作
L字型平面の一番奥が寝室。植物を置いたバルコニーから自然光が差し込み、解放感があります。サイザル麻を敷いた小上がりのベッドはゆったりしていて、猫もまどろむ心地よさ。小上がりの下は、もちろん収納として活用しています。
寝室の小窓下にはコンパクトな化粧コーナーを。IKEAのスツールを合わせました。
洗面台の脇やトイレにも!適所適量の収納を設けた水回り
洗面台横のオープン棚には無印良品のカゴを並べてタオルなどを収納。最下段は猫のトイレ置き場にしました。
トイレ内にもしっかり収納を確保。トイレの隣には深さのある洗面ボウルを造作し、間接照明のある気持ちのいい小空間になりました。キッチンでは使えなかったモールテックスで施工し、耐水性の実験中なのだそう。
約47㎡という数字よりもずっと広く感じられる大内邸。メイン収納のウォークインクロゼットに加えて、「使うものを使う場所に」の原則を守ったことで、この解放感が生まれました。大内さんの住まいは「狭くても、古くても、やり方次第で素敵に暮らせる」ことを教えてくれます。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
※情報は「リライフプラスvol.36」取材時のものです
設計/スモールデザインスタジオ 撮影/水谷綾子