防腐・防虫・防水効果にすぐれた天然塗料「柿渋」。独特の色合いは、青い渋柿を圧搾し、その果汁を発酵・熟成させることで生まれます。その歴史は古く、平安時代が始まり。一級建築士の増井小綾さんも柿渋の魅力にとりつかれた一人。これまで色々な木部に柿渋を塗って、その色合いや変化を試してきました。DIYでできる家の模様替えと注意点などを、事例を交えながら解説してもらいます。

青い渋柿を圧搾し、その果汁を発酵・熟成させた柿渋
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目次:

柿渋を床に塗ると独特の風合いが。有害物質を吸着して無害化もしてくれる!柿渋はDIYの家具をグレードアップしてくれる!色味は重ね塗りで調節風呂椅子にも、防水効果もあり耐久性を高めてくれる柿渋を塗装パーゴラ(外構)など直接日光が当たる雨ざらしの場所では不向き柿渋はネットでも購入可能。選ぶときはニオイのないタイプを!

柿渋を床に塗ると独特の風合いが。有害物質を吸着して無害化もしてくれる!

柿渋は、ややオレンジがかった明るい茶色の液体。木に浸透することで落ち着きが生まれ、時間の経過と共に濃く深まっていきます。和風モダンな空間はもちろん、クラシック、ナチュラルテイストなど、どんなインテリアとも相性は抜群です。

柿渋で良い味わいの出た床

無垢の木床に柿渋を塗った例です。木の温かみと独特の風合いが生まれました。
1度塗りは色が薄めなので、塗り重ねています。木目をそのままに、塗膜をつくらず浸透するので、木の呼吸も妨げません。

柿渋は安心して使える天然素材の塗料

柿渋は天然素材なので人体に無害です。さらに、接着剤で貼り合わされた合板や木材防腐剤などから発生する、ホルムアルデヒドを吸着し無害化する効果もあります。アレルギーに敏感な人でも、安心して住まいの内装材に使えます。

柿渋はDIYの家具をグレードアップしてくれる!色味は重ね塗りで調節

DIYの本棚も柿渋でいい風合いになった

ツーバイフォー用のパイン材でつくった本棚に柿渋を塗りました。DIYの家具をグレードアップさせるのに柿渋は一役買ってくれます。塗装直後は色が薄かったのですが、数か月経つと写真のような色味に変化しました。柿渋の特徴として、空気に触れると酸化して、次第に色が濃くなります。自然塗料のなせるワザです。

※塗装の際は、重ね塗りを前提として、薄めに1~2度塗り、数週間後に色合いを見てから、さらに重ね塗りするかを検討してください。重ね塗りは、ホコリを払えば、そのまま上から塗って問題ありません。

風呂椅子にも、防水効果もあり耐久性を高めてくれる柿渋を塗装

ヒノキの風呂椅子にも柿渋を塗装

昔の番傘の和紙に柿渋染めが使われたように、柿渋は防水効果もあり耐久性を高めてくれると言われています。そこでわが家では、ヒノキの風呂椅子にも塗装しています。4回程塗り重ねたため、色は濃くなっています。使用後に乾燥を心がけていたとはいえ、7年使い続けられているのは、柿渋の抗菌・防腐効果のおかげとも言えそうです。

パーゴラ(外構)など直接日光が当たる雨ざらしの場所では不向き

直射日光がよく当たるパーゴラへの柿渋塗装は不向き

柿渋は、基本的には屋内用の塗料で、紫外線に弱く、雨に当たると少しずつ洗い流されてしまいます。ですので、屋外で直射日光がよく当たるパーゴラへの柿渋塗装はおすすめできません。もし、使う場合は、直接日光や雨が当たらない場所で。

1年でパーゴラへに塗った柿渋は流れてしまった

わが家のパーゴラでは、塗装してしばらくの間は柿渋独特の色合いを楽しめましたが、写真のように1年後には、塗装が跡形もなく失われ、木材表面はグレーに自然風化しました。

柿渋はネットでも購入可能。選ぶときはニオイのないタイプを!

市販されている柿渋

柿渋は、インターネットで手軽に購入できます。現在売られている柿渋製品の多くは、無臭タイプの柿渋です。もともとは、発酵物独特のニオイがキツイので、なかなか一般人には扱いづらかったのですが、無臭化する製法が確立されて以来、身近な塗料になりました。購入の際は、一応、ニオイの有無を確認しましょう。ニオイの有無で効能に変わりはありません。

価格は500mlで1,500円程度です。手頃な価格であるのもうれしいですね。1ℓで大体10㎡程度塗れます。

柿渋塗装するときに用意するモノ

柿渋塗装するときに用意するモノ

  • ウェス(シャツの端切などでも可)
  • 刷毛(広い面積にはコテバケ<写真右端>も便利!)
  • 塗料受け皿(イチゴのパックなどでも可)
  • 養生テープ
  • ダンボール・新聞紙等の養生シート

柿渋は、刷毛またはウェス(布)を使って塗ります。柿渋は一般に、さらっとして粘りが少ないものが多いので、原液でも非常に塗りやすいです。刷毛で木目方向に1、2度滑らせる感じで、木に浸透させます。ウェスの場合は、布地に柿渋を取り、木に刷り込みます。

商品や木材の種類によって、発色や濃さが違ってきます。できれば実際の材料と同じ端材を使って、試し塗りすることをおすすめします。杉の木などは、吸い込みやすい材なので、1回塗りでは薄いと感じるかもしれません。好みの色味にするにあたり、何回塗りがよいのかいくつかパターンを出して試作します。

柿渋は塗る前に試し塗りしましょう

ヒノキ材に1回塗ったものと2回塗りしたものの比較です。

赤みのある杉板と白っぽい杉板に柿渋を塗った比較

こちらは赤みのある杉板に1度塗り(左)したものと、木肌の白い杉板へ1度塗りしたものの比較です。

試し塗りでは、塗りやすさも確認できます。ヒノキなどは油分があり、塗料を弾いてムラになりやすい材なので、ゆっくり刷毛を動かし薄塗りを心掛けます。商品によっては、薄めて使った方が刷毛の後が残りにくく、綺麗に仕上がります。刷毛とウェスを併用するのもよいでしょう。

そして、余った柿渋ですが、1年以内には使い切るようにしないと、ゼリー状になり使えなくなってしまいます。気温が高くならない暗所で保管します。木材以外にも、布地の染色にも使えるので、ぜひ使い切りましょう!

※作業にあたっては服装と床の養生が必要です。手についても水洗いで取れるのですが、衣類やフロアにつくと染まってしまいます。柿渋はさらっとしていて垂れやすいので、厚めの衣類・ダンボール等を用意しましょう。塗料のついた布・紙類は、自然発火の危険がないので、そのままゴミに出して構いません。