ベーションする前には、66㎡、玄関から真っ直ぐ伸びた先には中途半端な広さのリビングダイニングと和室のいう、ありがちなマンション。それが光あふれる3mのワイドな壁付けキッチンのある気持ちのいいLDKと、気持ちが上がるオープンなサニタリーのある空間に。住み手が求めていた小説の世界感を実現しました。
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リノベのテーマとなったのは小説『キッチン』の世界観キッチンは3mの壁付け。ゲストと調理を楽しんでも余裕のサイズ和室を取り払い、窓からに光あふれるワンルームのLDKに変更気持ちが上がる!「洗面島」と呼ぶオープンなサニタリーガラスの引き戸で仕切った、開放感とこもり感を両立させた寝室リノベのテーマとなったのは小説『キッチン』の世界観
以前からリノベーションには興味があって、リノベ経験者のブログを継続して読んでいたという伊藤さん夫妻。
そのブログで、夫妻の心を引き付けたのは、物件の仲介や、ヒアリングを重視した高いデザイン力と技術力に定評があるnuリノベーション(以下、nu)。物件探しから依頼して、緑豊かな公園や小川が近くにあるマンションを新生活の拠点に選びました。
リノベのテーマとなったのは小説『キッチン』の世界観。「喪失と再生をテーマにした少し影のある雰囲気」という思いを表現すべく、内装は木と白をベースにし、素材の質感や陰影などのニュアンスが感じられるトーンに仕上げました。
2冊ずつ同じ本が並ぶ壁面の本棚は、伊藤邸のシンボル的な存在。夫妻それぞれが結婚前に買ったもので、カバーの色のあせ方が微妙に異なるのがほほ笑ましい。
インテリアは、ネットで集めた画像を参考にしたそう。「nu の設計デザイナーさんには『このカップとソーサーの色の組み合わせが好き』などと伝え、トーンバランスを重視しました」
キッチンは3mの壁付け。ゲストと調理を楽しんでも余裕のサイズ
キッチンは当初、対面式を検討しましたが「限られた面積を有効に使いたい」と壁付けで造作。ふたりで調理をすることもあるため、キッチンは3mのワイドサイズ。フローティングタイプにして主張しすぎないデザインに仕上げました。
フライパンなどの調理器具は、壁付けレールでディスプレイ収納。ダイニングテーブルは、作業台だった古家具に夫が脚をつけ足して活用しています。
ワイドなキッチンは、ホームパーティでゲストとワイワイ調理を楽しんでも余裕のサイズで「料理好きな友人は率先してキッチンに立ち、8品くらい料理をつくってくれることも(笑)」
LDKをすっきり見せられるようにと、家電製品やストック食材はすべてパントリーに収納。
和室を取り払い、窓からに光あふれるワンルームのLDKに変更
かつて南側バルコニーに面してLDと和室に分かれていた間取りは、ワンルームのLDKに変更。南側のバルコニーから日差しがたっぷりと注ぎ込む、明るく開放的な空間になりました。
床は足裏に馴染みのよいオーク材、壁と天井はふんわり包み込むようなやわらかい白で塗装して、心地よさを堪能できるようにしました。
取材の1か月前に誕生した長男の部屋。リノベーションの計画当初は予備室的に考えていましたが「つくっておいて本当によかった(笑)」と夫妻。
北向きの窓からふんわりとした光が注ぎ込み、穏やかで心地よい空間となっています。「カーペットを新調したくて、いろいろ検討中です」
気持ちが上がる!「洗面島」と呼ぶオープンなサニタリー
妻がこだわったのが洗面室。「気持ちが上がる、明るいスペースにしたい」と、大胆なオープンサニタリーを採用。
中央には重厚感のあるオリジナルの洗面台を配置し、床は白いモザイクタイル。古道具店で購入したキャビネットを添えて、どこか懐かしさを漂わせる雰囲気にまとめました。
夫妻が「洗面島」と呼ぶオープンなサニタリーは、玄関とLDKの間に配置。「これまで住んだ賃貸は暗くて、そこでお化粧をしても楽しくなかったんです。だから、気分の上がる洗面にしたくて」と妻。
シンクと水栓は妻の希望でセラトレーディングのものをチョイス。脱衣所はあえてつくらず、来客時にはカーテンで簡易に間仕切りできるようにしています。
洗面台をテーブルのように見立て、サニタリーの主役として配置。天板はラフな素材感と色味を楽しめるモールテックスを採用しました。天板の半分は、メイクをしたりアイロンがけや洗濯物を畳む作業台として使用。下の台には歯ブラシなどを収めるニッチ収納も完備。
タンクレストイレも検討しましたが「高層階なので水圧が弱いかも、と事前に説明があったので」見送ることに。タンクを造作収納に収めることで、希望どおりのすっきりとした見た目を実現。
かつてキッチンがあった場所は、家族共有のウォークインクロゼットに。配管のパイプスペースが動かせないためL字型となっています。
内部は市販の棚やポールを活用して収納。現在は扉がないオープンタイプですが、必要に応じて扉を付けられるようにと、下地処理も行っています。「入口から中が見えにくいし、オープンだから湿気もこもらず快適です」と妻。
ガラスの引き戸で仕切った、開放感とこもり感を両立させた寝室
玄関を入ってすぐの場所に、ガラスの引き戸で仕切った寝室を配置。
開放感とこもり感を両立したいという希望で、ガラスの引き戸は高さ95㎝。「玄関からは丸見えにならず、程よく囲われている絶妙なサイズ感ですが、妊娠後期には入るのがひと苦労でした(笑)」と妻。
写真正面のシューズクロゼットの取っ手は、真鍮製のオリジナル。靴の脱ぎ履き用に置いたイスは「出かけるときに気持ちを整えたい」という夫のこだわりです。
「私たちにとって世間的な流行や格好のよさは重要でなくて、いかに自分たちが心地よく暮らせるか、好きなモノに囲まれるかということが大切でした。このリノベでは、その思いをすべて表現できたかなと思います」とほほ笑む夫妻。おふたりの世界観が生み出した、唯一無二の住まいが完成しました。
設計・施工/nuリノベーション
撮影/水谷綾子
※情報は「リライフプラス vol.35」掲載時のものです。