ともに神奈川県横浜市出身であり、職場や以前の住まいも横浜だったKさん夫妻。「横浜を離れずに、もう少し静かなところに住みたい」と馴染みのあるエリア内で物件探しをするなかで出会ったのが、平成15年築のマンションでした。まるで一戸建てのような開放感が気に入り、購入したそうです。リノベーションの設計・施工は、オリジナル家具を製造・販売し、空間のプロデュースなども行うSTANDARD TRADE.(スタンダードトレード)に依頼。同社の家具が好きという夫妻が、念願を叶えた形です。リノベ工事費は1,500万円(税・設計料別)でした。
オリジナル家具をたっぷり使ったリノベ!
マンションの専有面積は92.20㎡、テラスと専用庭に面して大きな窓があるつくりです。
すべての画像を見る(全16枚)Kさん夫妻はいつも手前側に並んで座り、緑を見ながら食事をするそう。「食事を大事にしたい」という夫妻の思いを生かした、ダイニングが特等席になるプランです。
その大切な空間に据えられたキッチンとダイニングテーブルは、STANDARD TRADE.(スタンダードトレード)のオリジナル。
「スツールなどは前から持っていたんですが、大きな家具は買わずにいました。いつかオーダーでつくってもらいたかったから」と妻。
ダイニングテーブルはナラ材特有の虎斑(とらふ)の表情を生かしています。「あえて濃淡をつけて、この順番で並べました」と同社代表の渡邊謙一郎さん。
リノベ前のキッチン
キッチンの位置はリノベ前と同じですが、LDとの間にあった壁を取り払い、オープンなスタイルにしました。
オリジナルキッチンは引き出し収納が充実。対面カウンター側にも作業スペースがあり、調理がはかどりそうですね。すっきりとしたデザインの冷蔵庫は、アメリカのワールプール社製です。
キッチンをオープンにしたことで、LDKは空間が一体化。開放感がアップしました。ただ、床はカーペットとタイルを貼り分けて、リビングとダイニングを緩やかに分けています。
正面のサイドボードは床との間を空け、圧迫感をなくす工夫がされています。
リノベ前にあった和室
LDに隣接していた和室は、リビングに変更しました。
リビングの主役は、10人以上がゆったりと座れるL型ソファ。この空間に合わせて造作したものです。脚を付けず、座面を宙に浮かせることで、水平ラインを強調しています。
木枠は面取りが施されていて、丁寧に仕上げられています。
職人技が光るオーダーメイドの建具にも注目
「廊下を広く」はリノベの大事なポイントのひとつだったそう。和室をなくし、トイレを移動したことで広さを確保しました。「廊下が広いって、贅沢ですね」(夫)。さらに、廊下を玄関ホールと一体化、リビングとの仕切り壁の上半分をガラスにすることで、つながりと広がりを演出しました。
LDK側から廊下を見ると、正面が寝室になります。
ベッドもヘッドボードもSTANDARD TRADE.(スタンダードトレード)のオリジナルです。寝室の壁は珪藻土に。
寝室の収納は壁のようにも見えるシンプルなつくり。空間にとけ込んでいますね。
オーダーメイドなのは家具だけでなく、建具も!例えばドアは、周囲の枠を「馬乗りホゾ」という仕口で組み立てる伝統的な技法でつくられた框(かまち)ドア。ねじれが生じにくいそうです。ドアノブは真鍮製。職人による手仕事が生んだ家具や建具が織り成す空間だからこそ、このような上質な空間が生まれたのですね。
水回りも開放的でゆったりとしたつくりに
寝室隣の個室は、床をパーケット張りで仕上げたゲストルームです。
そして、ゲストルームの隣が水回り。ゆったりとしたスペースに浴室、洗面、トイレを配置した機能的な間取りになっています。浴室と洗面スペースはタイル壁だけで緩やかに仕切っているため、開放的です。
洗面スペースには広いカウンターがあり、夫の希望で、洗濯機を挟んで2つ洗面ボウルを並べています。壁のタオルウォーマー(ピーエス暖房機器)は施主支給品です。
トイレには棚ひとつなく、いたってシンプル。ドアはここも框(かまち)ドアで、トイレにも上質さが貫かれています。「思っていた以上に素敵につくっていただいて、毎日、家にいるだけで満たされています」とリノベ空間を日々楽しんでいる夫妻でした。
設計・施工/STANDARD TRADE.(スタンダードトレード)
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.29」取材時のものです