Iさん夫妻の住まいは、世田谷区にある3階建て集合住宅の1階。妻の亡き祖父が持ち主であったこの集合住宅は、祖父の自宅も兼ねていました。その祖父の住居部分と隣の賃貸部分をつなぐことで、96平米という大空間が出現。リノベーションは空間社に依頼し、工事費1,650万円(税・設計料込み)で夫妻の希望であった「楽しくホームパーティできる空間」を実現させました。
キッチンはホームパーティを楽しめる空間に
すべての画像を見る(全14枚)玄関を入ると、奥行きの深いLDKが目の前に広がります。祖父の住居部分を丸ごとLDK空間にあて、大きなアイランドキッチンを設置。
そしてダイニングは、8~10人が余裕で使えるテーブルがゆったりを置けるほどの広さを確保しました。また、西側を書斎とカウンターで仕切り、ワークスペースとパントリーを設けてあります。
ダイニングテーブルの先にはアイランドキッチンが。「料理していると、みんな自然とここに集まって手伝ってくれるんです」と妻。対面からもサイドからも調理に参加できて、ホームパーティを存分に楽しめます。
幅2840mmというワイドサイズのキッチンの背後には、色鮮やかなカウンター。調理が効率よくはかどるレイアウトです。通路の幅は950mmを確保し、料理好きな夫妻が同時に作業してもラクにすれ違えます。
また、キッチン通路の延長線上、書棚の奥にはパントリーがあります。1坪強の空間には、ストック食品や酒類のほか、掃除機や外出用の衣類なども収納されています。
キッチンに立って玄関側を向いてみるとこんな景色。正面の玄関ホールの左右にリビングと多目的ルームを配置しました。ともに南側に面していて、日当たりは抜群。同一空間なのでキッチンまで光が届くそう。
リビングはダイニングキッチンとひとつながりの空間にありますが、隣接するエントランスの奥行きを利用したゾーニングに。ほどよいこもり感のあるつくりになっています。ソファで読書やテレビにじっくりと集中できそう。
つながり感も、こもり感もあるワークスペース
LDKの一角には夫専用のワークスペースを実現。カウンターには夫の祖母の家で使われていた青森ヒバが使われています。
オープンなつくりでありながら、中に入るとほどよいこもり感もあり、なんとも落ち着ける雰囲気です。こちらには造作のオープン棚を設置。「空間に背を向けていることに違和感があるので」という夫の希望で、デスクはLDKに面して付けられているのも特徴です。
大空間の一角だから解放感があり、LDKにいる妻とのコミュニケーションも取りやすいそう。
こちらはLDKとは引き戸で仕切られている多目的ルーム。引き戸の開閉により、LDKとのワンルームにも、個室にもできるフレキシブルな空間に。幅広の無垢ラスティックオークのフローリングからは木の美しさが感じられます。
もともと賃貸部分だった空間の約半分を使い、ゆったりとした寝室に一新しました。大容量のクロゼットを置いても余裕の広さを確保。残り半分は水まわりにあて、相互の行き来を良好にしています。壁の一面だけミントグリーンの塗装を施してアクセントに。
ゲストが多くても大丈夫!ゆとりのエントランス
寝室の前から玄関側を向くと、右手には書棚が連なっています。エントランスは既存の2倍近く広めに取ったことで、ゲストが多い日でもゆったり。
靴収納も扉のないオープンなつくりにしたため、空間がより広々と感じられます。玄関を入ると目の前がすぐ生活空間なので、必要に応じて引き戸を開閉して使っているそう。
寝室と至近距離の位置に水まわりを配置。天井にはワークスペースにも使った夫の祖母宅の青森ヒバを。水に強いヒバの適材適所の再利用となりました。
洗面台の壁面には、かわいい柄クロスや個性的なタイルなどで遊び心をプラス。タイルは「バティック」(名古屋モザイク)というシリーズの柄をランダムに組み合わせたそう。こうした仕上げや水栓、スイッチプレートなどは、妻がインスタグラムなどで探したイメージ画像をもとに、空間社がセレクト、提案をしました。
祖父の計らいでつくられた2戸をつなげて、大胆にリノベーションをしたI邸。余裕の広さに加えて、夫妻の気さくで大らかな人柄が、訪れる人をもてなしてくれます。
設計・施工 空間社
撮影 山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.19」取材時のものです