木の家というとログハウスを連想しがちですが、もっとモダンで軽快な雰囲気の家に大注目!2人の子どものいるY夫妻が89坪の敷地に建てた、健康的で経年変化が楽しめ、メンテもしやすいイマドキの自然素材の家をご紹介します。
境界を曖昧にして自然を呼び込む家
すべての画像を見る(全18枚)敷地は愛知県内にある妻の実家の隣。道路の向かいは公園で、遠くの美しい山並みも一望できる好ロケーション。夫妻はここになるべく健康的に過ごせる素材を使った家を建てたいと願いました。また、モダンであり、存在感のある外観を、との意向も。こうした思いを形にしたのは、建築家の吉村昭範+吉村真基さん(以下、吉村さん)。
写真は敷地の一番奥から撮った外観で、東西2つのボリュームに分かれた建物が特徴です。
東西の建物の間に配置した中庭は、公園のある道路側から続くような切り通し状の屋外空間。吉村さんは「眺望のいい立地を最大限生かし、敷地と遠くの風景をつなげられたら」と考えたそうです。外壁は耐候性に富んだレッドシダーを採用。テーブルとイスは、読書をするのもビールを飲むのも気持ちよさそう!
さらに吹き抜け状の玄関ホールの壁も、外壁と同じレッドシダー。
どこまでが屋外でどこから室内なのか意識的に曖昧とし、自然との一体感が楽しめる工夫です。
レッドシダーはサイディングパネル(チャネルオリジナルの「ベベルノッティ」)仕様で、長期メンテナンス付き。「天然木ならではの経年変化を楽しめつつ、もし破損したら部分的に取り換えられる点がメリット。長く住み継いでもらえます」(吉村さん)。
勾配天井に梁が描くラインが奥行き感をアップ
建物は、西側をLDKと子ども室、東側を寝室や水回りなどで構成。LDKは南北に長い空間で、一部を吹き抜けとして2階子ども室とコミュニケーションしやすい設計です。
天井部に連続させた梁のラインがダイナミック!
こちらはLDKの見返し。ソファの位置から中庭、さらに東側の主寝室まで目が届きます。
奥行きを生かし、ゆったりと設置されたオリジナルのアイランドキッチン。収納側の壁には調湿効果のあるタイルが貼られ、白っぽい空間に変化をつけています。
キッチンと玄関ホールは至近距離。広々としたホールで遊ぶ次男によく目が届きます。床はナラ材の三層フローリングで、色味が壁材とよくマッチ。
質感豊かな突き板張りの玄関ドアも魅力的。
エイジングが感じられるハンドルは、鉄にサビ感のあるタイルを溶着したものだそう。
木目も節も面白い構造用合板をインテリアに活用
キッチンの真上にあたるのが子ども室。正面に勉強用のカウンターデスクを設置し、階下からさりげなく見守れるレイアウトです。
天井の高い子ども室の北側には、秘密基地っぽいロフトを設置。また東側に洗面室とトイレを隣接させ、朝の支度も快適そう。
天井部をクローズアップ。素材はベイ松の構造用合板で、木目や節をインテリアに生かしました。いわば、普段着感覚の自然素材といった印象!
「全体的に木の影響でしょうか、この家はジメジメしないし、乾燥もし過ぎない。わが家にいらした方は皆さん、気持ちのいい家だねと言ってくれます」(妻)。
こちらは東側の建物の主寝室。中庭に接し、植栽のグリーンも眺められます。テラス窓から中庭、さらに西側のリビングへもショートカットOK!
下の写真は、向かいの公園からの外観。ガラス張りの奥に中庭が控えますが、建物は擁壁の上にあり、敷地の奥に寄せられているので視線が入りません。
こちらは、敷地の奥にある庭で遊ぶ次男。シースルーの玄関ゾーンから、姿をキャッチできそう。
素材のナチュラルな風合いを感じながら絶妙のオープン性とプライバシーへの配慮で、楽しく快適に暮らすYさん一家です。
設計/D.I.G Architects
撮影/日紫喜政彦
※情報は「住まいの設計2017年9-10月号」