子どもが生まれるタイミングで、自ら設計してリノベーションするための物件を探していたという建築家の平野玲以さん。自邸+設計事務所にする前提で100平米ほどの物件を探していましたが、見つけたのは昭和49年築、専有面積141平米の住戸。大小4つの住棟がロの字型に配置され、ブリッジで結ばれた大規模マンションです。子ども用の屋外プールがある広い中庭をはじめ、共用施設も充実しています。

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当初からサニタリーが1か所に集約され、自宅用と仕事用と2つの玄関を持つ構造は条件にぴったりだったと言います。物件価格は2,380万円、リノベーション工事費は800万円ほど。

100平米から141平米へ。予定よりも床面積が大きくなり、予算内に収めるための対策が必要になりました。その答えのひとつが、サニタリースペースを動かさないことと既存の設備を再利用することでした。

目次:

サニタリースペースを動かさず、設備を再利用することでコストダウン畳とレトロなキャビネットも既存を利用IKEA製品をアレンジして作ったオリジナルキッチン愛犬と赤ちゃんにも優しいフローリングをチョイス

サニタリースペースを動かさず、設備を再利用することでコストダウン

前のオーナーがリフォームして、比較的状態がよかったユニットバスは残すことに。取り替えると最低50万円、こだわれば100万円近くの出費になるため大幅なコストダウンになります。シャワー水栓とミラーのみ交換することにしました。

同じ理由で既存のまま使用する予定だったトイレは、使ってみると水圧がかなり弱いことが判明し、入居後まもなく交換することになりました。フローリングとクロスを張り替えてスッキリ。

洗面スペースはブルーのクロスでさわやかに。洗面ボウルはイースター島モアイ像に着想を得たというサンワカンパニーの「モアイ71R」を採用しました。

畳とレトロなキャビネットも既存を利用

リノベーション前のリビング

カーペット敷きの真ん中に畳スペースを設けた寝室。畳は和室にあったものを表替えして再利用しました。同じく壁側にある既存の造作キャビネットも気に入り、取り壊さずに活用するなど使えるものは極力取り入れる工夫を。

寝室のオブジェのような独立壁の裏側は、左右から通り抜けできるウォークスルークロゼット。壁の上に隙間もあり、風通しが良く閉塞感を与えないようにしました。

IKEA製品をアレンジして作ったオリジナルキッチン

室内窓を設けて土間側から光を呼び込んだキッチン。アイランドカウンターはIKEAの壁付け型製品をベースに、ステンレス扉材の腰板や木製天板を組み合わせたオリジナルです。

朝食時の利用や親子での調理なども想定して、アイランドカウンターは天板を広く設計。空間のアクセントとして外側に丸みを持たせたデザインにすることで、玄関からのスムーズな動線にも配慮しました。

左はキッチン収納の引き出し。妻の希望で生活感を抑えるためキッチンには吊り戸棚を設けず、カウンター収納を造作してカトラリーや食器などをしまっています。
右はリビングダイニングの一角にある納戸です。

使いやすさを優先し、あえてリビングダイニングに設置しました。収納スペースを張り出させたことで、大空間にメリハリを与えています。

居室の広さに合わせて玄関土間もゆったりと確保しました。大きなリビング扉を明けると画家・白水麻耶子さんの印象的な作品が出迎えてくれます。

愛犬と赤ちゃんにも優しいフローリングをチョイス

「広くてシンプルな間取りだから模様替えの自由度も高いですね」と妻。
LDの壁をラベンダー色に塗装することで、コストを抑えながらインテリア性をアップさせました。

アームが自在に動くフロスの265ウォールライトを使いこなせるのも大空間ならでは。ザラッとしたノコ目仕上げのナラフローリングは、あえて明るめの色を採用。
愛犬や幼い子どもが走り回っても滑りにくいように配慮しました。

設計事務所として使っている平野さんの仕事部屋はミニマルな雰囲気。家人を気にすることなく使用できる独立した玄関があることで、ゲストの迎え入れもスムーズにできるのだとか。
限られた予算の中で、コストとデザインのバランスが取れたSOHOが完成しました。

設計/平野玲以建築設計事務所
撮影/水谷綾子
※情報は「リライフプラスvol.23」取材時のものです