ダーニング的なリノベとエコな設備で快適な家に
丁寧に住まわれてきた築43年の家。東山さん夫妻の五感に響いた建物は、補修法「ダーニング」でよみがえりました。
改修のポイントは、デザインとコストの両立。LDKにはとことんこだわり、床に足触りのよいオーク無垢材を採用。その一方で、廊下との間仕切り扉は既存を塗装し直し、ブルーグレーのキッチンカウンターはDIY塗装でコストアップを防ぎ、予算内で納得のいくリノベを行いました。
以前はさまざまな樹木が植えられてうっそうとしていた庭は、不要な植栽を夫が伐採して日当たりのよい環境に。室内へも光と風を呼び込むように整えました。この庭は、家族でバーベキューを楽しんだり、友人を招いて屋外ホームパーティを楽しんだりする場としても活躍。生活に楽しみをもたらすアウトドアスペースとして機能しています。
また、「エネルギーは自家発電でまかないたい」という妻の希望で、リノベ完成後に太陽光発電を導入。
「屋根の形状や大きさが十分だったため、設置はスムーズでした。当初考えていたよりも発電量が大きく、想像を上回るエコライフになっています」(夫)
時代を越えて、造形美や確かな技術を受け継ぎながら、自分らしいエッセンスを加えた現代の暮らしに。東山さんの住まいは、スクラップ&ビルドでは味わえない家の醍醐味にあふれています。
太陽光で自家発電してサスティナブルな生活を実現
すべての画像を見る(全24枚)外観の様子。
「エネルギーは自家発電したい」と考えた妻。ガルバリウム鋼板に葺き替えた屋根に太陽光パネルを設置。「無理をしないエコな暮らしは、のんびりとした私の性格にフィットしています」と妻。
使い勝手とデザインを両立。機能的なキッチンと水回り
以前クローズドだったキッチンは、セミオープンに変更。コンロとシンクはリビングダイニングと対面するように配し、料理をしながら家族で会話を楽しめる環境に整えました。壁には、妻の希望でサブウェイタイルを使用。
かつては閉鎖的だった、リノベ前の様子。
壁全面にサブウェイタイルを用いた、清潔感あふれる洗面室。既存の上部の窓から光が差し込み、明るさと開放感も得ています。洗面ボウルは大きめサイズの実験用タイプを選び、親子で並んで使えるようにしました。
リノベ前の様子。
既存の植栽を伐採したことで、ポーチから庭が丸見えになってしまったそう。そこで、以前の住まいで使っていたカーテンを目隠し用の暖簾に用いて、庭のプライベート感を高めました。
寝室は、既存の漆喰壁を生かしながら補強が必要な部分だけに手を加えた、最もダーニング的な発想が表れた空間です。クローゼットの扉も取っ手も、そのまま利用しています。
2階の真ん中にある洋室の上部には、ロフトがあります。おもにシアタールームとして使っていますが、友人家族が宿泊することが多いため、ゲストルームとしても活用。
ロフト下部の洋室は、夫妻の仕事部屋に。窓辺に作業用のデスクを置いて、シンプルなインテリアでまとめました。
2階のホールは一切手を加えていません。パーケットフロアが、レトロモダンな表情をもたらしています。正面のドアは寝室へ続き、はしごを上れば障子引き戸のロフトへ。左に見える洗面は、既存の洗面台に木製天板をかぶせて再利用。
玄関のパーケットフロアやゲタ箱もそのまま利用。「住まい全体に、本物の木のよさが感じられます。大切にされてきたこの家を、ずっと慈しみながら暮らしていきたいです」と夫妻。
間取図
DATA
敷地面積/159.49㎡(48.33坪)
延床面積/108.39㎡(32.85坪)
1階/60.81㎡(18.43坪) 2階/47.58㎡(14.42坪)
用途地域/第1種低層住居専用地域
建ぺい率/40% 容積率/80%
構造/木造軸組工法
竣工/2019年5月
リノベーション工事費/約1500万円
素材
[外部仕上げ]
屋根/ガルバリウム鋼板
外壁/漆喰
[内部仕上げ]
1階 床/オーク
壁/漆喰
天井/羽目板、構造表し
設備
厨房機器:システムズヤジマ
衛生機器:LIXIL
窓・サッシ:既存アルミサッシ、オリジナル(室内窓)
施工/小島工務店
設計/小嶋良一(こぢこぢ一級建築士事務所)
※情報は「住まいの設計2021年10月号」取材時のものです