最近注目されているのが「家族葬」。参列者が少ない方や家族だけでひっそりと葬儀を行いたい人を中心に、小規模な葬儀を選択する人が増えています。
遺族の当日の負担や費用を考えると一見メリットが多いように見える家族葬ですが、葬儀後に大変な思いをするケースもあるようです。
そんな家族葬をめぐるトラブルについて、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さんが、葬儀の現場でよく聞かれる声をもとに、道子さんという方のケースを例に紹介してくれました。
元教師の父の死。生前の希望で「家族葬」を選択しますが…
道子さんはある地方の県庁所在地に住む50代の主婦。結婚を機に同じ県の小さな町から引っ越しました。実家のある町で定年まで教師を勤めあげた80代の父の容体が数年前から思わしくなく、道子さんの自宅近くの病院に入院させて看病する日々を送っていました。しかし、看病の甲斐なく父は死去してしまいます。
もともと喪主をやることが決まっており、父本人から「近親者も少ないし、最低限の家族葬にしてくれ」という意向を聞いていた道子さん。父が教師をしていたため参列者も少しいるかもしれないとも考えましたが、あまり教え子の同窓会に顔を出すタイプではなかったことや「もう20年以上前のことなので教え子も覚えていないだろう」と苦笑いする父を思い出し、遺志に沿った家族葬を行うことにしました。
すでに母も父の親兄弟もほとんど他界していたため、参列者は父の弟一家と道子さん一家、それに道子さんの妹一家のみ。道子さんから「父が家族葬にしたいと言っていたのでそうしたいと思う」と伝えたところ反対する人はだれもおらず、葬儀はつつがなく終わりました。
●「お線香をあげたい」という客がひっきりなしに。アポなしの人も!?
「温かい葬儀にできてよかったね」と妹と話していた道子さんですが、葬儀が終わった数日後からひっきりなしに連絡が来るようになりました。父と親交のあった人たちが「お父さんが亡くなったと聞いた。お線香をあげたい」と申し出てくるのです。
道子さんは慌てて父の遺骨と位牌を携えて実家に帰省し、入院から片づけていなかった部屋の中を整理してお客様を迎える支度をしました。すると、道子さんが帰ってきたことに気づいた父の教え子や教師時代の後輩が絶え間なくお線香をあげにやってくるようになりました。
だれかが帰ったと思えばまただれかがやってくるため、落ち着いて食事にも買い物にも行けない道子さん。ときに“アポなし”でやってくる人もいるため一切気を抜くことができません。更に「なぜ葬儀に呼んでくれなかったのか」と道子さんを責める人もおり、いい思い出になったはずの葬儀に後ろめたさまで感じるようになりました。
「父にここまで人望があったなら、家族以外も呼べるような葬儀を開いて一気に参列者を呼んだ方が早かったかもしれない…」お線香をあげに来る人に何度も同じ話をして疲労を深めながら、道子さんはぼんやり考えています。
さて、道子さんはどうすればよかったのでしょうか。ここから解決編になります。