まじめで責任感の強い人がなりやすいと言われる、うつ。しかし「うつ専門メンタルコーチ」として、1万人以上のクライアントを指導してきた川本義巳さんは、「どんなに楽観的な人でも、ゆるい性格でも、うつになることも」と言います。

「うつになるのは性格というより、環境の問題が大きいんです。環境次第では、どんな人でもうつになる可能性はあります」と語る川本さんに、人はどんな環境でうつになってしまうのかを語ってもらいました。

人はどんな環境でうつになってしまうのかを語ってもらいました
うつになってしまう環境とは?(※写真はイメージです)
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楽観的な人もうつになる可能性が。うつになりやすい環境とは?

まずは、典型的なうつになるパターンを事例で紹介しましょう。

●残業や休日出勤で、メンバーの仕事を自分でこなして…

新卒でIT企業に就職し、プログラマーとして、がむしゃらに頑張り続けてきた裕子さん。入社7年目で念願のプロジェクトリーダーにも抜擢されました。
しかし、まかされたプロジェクトは予算も人員も少なく、さらに納期も厳しいものでした。

それでも祐子さんは「これは与えられた仕事だからやりぬかないと」、そう自分を鼓舞し続けましたが、プロジェクトはトラブル続き。
「さすがにメンバーにこれ以上負担をかけるわけにはいかない」
そう思った祐子さんは、残業や休日出勤を増やし、メンバーの仕事を自分でこなすという毎日を過ごしていました。

気がつけば「一人で必死にがんばっている」状態に。疲労と焦りが増えていくのを感じるようになります。
なんだか眠れない、体がだるい、大好きだった読書も全然できない。そういえば食欲もないし、外出もしなくなった。口数も減ったし笑わなくなった。そんな日常が半年ほどたったある日、体がまったく動かないという感覚に襲われたのです。

体がまったく動かないという感覚に襲われた
※写真はイメージです

「どうしたんだろ…でも会社に行かなきゃ…」
ベッドの上で1時間ほど格闘してみたものの、とうとう起き上がることはできませんでした。このときはまさか自分が「うつ病」と診断され、半年も会社を休むことになるとは思ってもみなかったのです。

●適応できない環境に身をおいてしまった

祐子さんのケースは、私がこれまでかかわってきた「うつ」の人の典型的なパターンです。「まじめで責任感が強く、どちらかというとコミュニケーションが得意ではない」。相談にきた人の多くが、祐子さんと似た性格の持ち主でした。

では、祐子さんのような性格の人は、必ず「うつ」になるのでしょうか? 答えは「NO」です。
たしかにまじめで責任感の強い人は自分を追い込みがちなので、「うつ」になるリスクは高いのですが、その真逆の元気な人や、わりとゆるい性格の人でも「うつ」になることはあります。

じゃあなぜ、祐子さんはうつ病になったのでしょう。
それは彼女が「適応できない環境に身をおいてしまった」からです。
人はそれぞれ、自分の成功パターンを持っています。「まじめにやったら認められた」「おとなしくしていたら怒られなかった」「自分の意見を押し通したら文句を言われなくなった」。
これらはほとんど子ども時代に経験することですが、一度「成功した」と思うと、私たちはそのパターンを継続する傾向があります。

ところが世の中には、当然、自分の成功パターンが通用しない環境があります。
おとなしくしていたらなにも言われなかった人が、意見を言わないと責められる職場に勤めると、どうしていいのかわからなくなります。自分の意見を押し通してきた人が「黙って決められたことだけをする」という職場に勤めると、間違いなくストレスがたまります。

●環境に対応する方法を学ぶことが大事

このときに環境に適応できず、これまでのパターンに執着をすると当然行きづまります。そして「うつ」になっていくわけです。逆にいうと、慣れない環境に身を置いても、それに対応する方法を学んでいれば、対処することが可能です。

祐子さんがうつになったのも性格の問題ではなく、「環適に適応する方法を知らなかった」だけなんです。もし祐子さんが「がんばればなんとかなる」というパターンだけでなく、「『助けて』と言える」パターンももっていたら、「うつ」にはならかなったかもしれません。

よく、「うつになったのは自分の性格のせいだ」と、自分を責める人がいますが、適応パターンと環境のミスマッチがあっただけ。適応するための新しいやり方を覚えればいいだけなので、じつはけっこう簡単に解決できるのです。
あなたはあなたのまま、うつから抜けだすことができます。

いかがでしたか。困難な状況にある人も、今までと違うアプローチで問題に取り組むと、案外あっさりとうつぬけできるかもしれません。
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