福岡県で小さな喫茶店を営むまさこさん(現在40代)。ALS(筋萎縮性側索硬化症)という体が少しずつ動かなくなっていく病気とともに生きながら、人生を楽しみ、夢に向かって挑戦し続けています。まさこさんの現在の目標は「一冊のレシピ本を残すこと」。人気喫茶店の店主、そして母として、まさこさんが今、思うこととは?
すべての画像を見る(全8枚)念願の喫茶店をオープンして充実した日々
喫茶店文化が根づく愛知県豊橋市出身のまさこさん。結婚後、家族で世界を旅し、さまざまな土地の「おいしい」を体験してきました。
やがて福岡に移住し、2018年に念願の喫茶店「サウンズフード サウンズグッド」をオープン。パエリアパンで仕上げる熱々のナポリタンや、やさしい甘さの紅茶プリンなど、オリジナリティあふれるメニューが評判を呼び、着実にファンを増やしていきました。
突然の体の異変。ALSと診断されて
ふたりの子にも恵まれ、順風満帆に見えた日々。しかし2021年初めごろ、まさこさんの体に異変が現れます。足が思うように動かず、転倒が増え、歩行が困難に。病院を受診しても原因は分からず、不安な日々が続きました。
2023年、ようやく告げられた病名は「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」(※)。神経の障害で筋肉が徐々に動かなくなる病気で、いまだ治療法が確立されていない難病でした。
※ 神経の障害により、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなり、筋肉がやせていく難病。一方で、体の感覚や視力、聴力などは保たれることが多い
絶望のなかに差したひと筋の光
ALSと診断され、途方もない恐怖と絶望に包まれたという、まさこさん。そんな彼女の希望となったのが、症状が改善し、日常生活を取り戻した「リバーサル」と呼ばれる元患者の存在でした。
「そのような事例があると知ったとき、たとえわずかな確率だったとしても、真っ暗闇の現実にひと筋の光が差したように感じました。そこから、『命の長さばかり考えて生きるのではなく、リバーサルの可能性を信じて人生を楽しんでみよう』と、思えるようになったんです」(まさこさん、以下同)
それは自分らしく、ありのままに生きることへの決意でもありました。