大きな災害が起きたとき、避難所に移動して安全を確保する必要がでてくることも。たくさんの人が集まるため、かならず生活に必要なものが手に入るとは限りません。プライバシーなどが気になって、快適に過ごせないことも…。少しでも不安なく避難所生活を送るために、必要な「備え」について、国際災害レスキューナースの辻直美さんにお聞きしました。
すべての画像を見る(全12枚)避難所はホテルではない。自分で備える必要あり
自宅にとどまることが危険な場合など、避難所へ行くことになります。その避難所生活について、辻さんは「“快適さ”や“プライバシー”は期待してはいけない」ときっぱり。
「与えられるのは1人1畳程度のスペース。仕きりがない場合も多く、知らない人のすぐ隣に寝泊まりするわけです。お風呂やシャワーも使えず、人々の体臭が充満。冷暖房がない避難所も少なくありません」
また、生活音ひとつとっても、「うるさい」「不快だ」と思うレベルは人それぞれ。モラルや常識が異なる人たちと過ごすのは想像以上のストレスです。当然、トラブルも多発。イライラは伝染するため、常に一触即発の状態…という避難所もあるそう。
「ネガティブなことを述べましたが、それだけの覚悟が必要だということ。そして、『避難所はそういう場所だ』と承知しておけば、事前に備えることができます」(辻さん、以下同)
避難所生活でのものの備え・基本3か条
避難所生活を少しでも快適なものにできる準備と知恵と工夫を、辻さんに教えていただきます。
●1:自分のものは自分で用意する
「避難所が提供してくれるのは、基本、屋根と床だけ、と思っていてください。水や食料は全員分ありません。毛布や寝袋もあるとは限りません」と辻さん。支援物資が届くのに時間がかかる場合もあり、必要なものは自分で用意するのが、避難所生活の基本なのです。
●2:自分にとって必要なものの優先順位をつける
「持っていけるものには限界がありますが、自分が根源的に大切にしているものがかなわないと力が出ません」。そのため、自分にとって大切なものを手厚く用意します。食にこだわりがある人は元気が出る食料を、汗くさい自分がイヤという人は汗ふきシートを多めに。
●3:家に取りに戻れるとは限らないと心得て
2016年の熊本地震では最大震度7の揺れが2度起こり、1回目の揺れのあと、自宅に帰った人が多く犠牲になりました。「着の身着のままで避難所にやってきて、必要なものはあとで家に取りに帰るという人がいますが、この考え方はやめましょう」
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