流行はなく「古くても好きなら着ればいい」
すべての画像を見る(全7枚)日本では「今年はこれが流行り」と言われれば、多少なりとも、それがないと置いていかれるような気持ちになることがありました。また、自分だけが去年と同じものを使っていることに寂しさを感じることも…。
でも、スペインでは春夏秋冬、人それぞれが好きな服を着て、流行そのものに力がないように思えます。何年も前の服を、堂々と着ている人たちも多いですし、私自身も服に寿命を感じなくなりました。
「古くても好きなら着ればいい」という考え方が染み込み、流行に合わせて消耗することの方が、急に色あせた生活に見えるようになったのです。
ものより時間や経験を優先したくなった
以前は「自分へのごほうび」と言えばバッグやアクセサリーでしたが、今はおいしいごはんや小さな旅、友達と過ごす時間に、ごほうびを感じられるようになりました。
買い物で高揚する気持ちは、数時間もすれば落ち着きます。でも、記憶に残る時間は、ふとした瞬間にまた心を温めてくれるものです。
スペインでの生活は、そういう「積み重なる幸せ」に喜びを感じ、物欲が減ったというより、「欲しいもの」が別の所に変わった、と言う方が正しいかもしれません。
欲しいものがない自分はちょっとうれしい
「ものが少ないと、部屋にも心にも余白ができる」という感覚を得たのも、海外で暮らすようになってからです。
収納場所に限りがあったり、またいつか引っ越しをしなければならないと思うことも、物欲が減った原因だとは思いますが、余白こそが贅沢に思えるようにもなりました。
とくに買いたさず、自分の量だけが目の前にあると、必然的に探す手間が省け、常に風とおしがよいんです。逆に日本にいた頃は、あいているスペースがあると「なにか買える!」「なにか埋めなきゃ!」と思っていたような気がします。
ものを持つことも、手放すことも、どちらも自由にできる時代。
ただ今の私には、「もたなくていい」と思えるこの軽やかさが、自分をラクにしています。服もバッグも器も、少なくなった分だけ、1つ1つに愛着が生まれ、大切にするようになりました。
たくさんのものをもっていた頃よりも、今のほうが心はずっと満たされ、「欲しいものがない」と思える今の自分が、ちょっとうれしくも感じています。
スペインでの暮らしは、私に「たすこと」より「今あること」に目を向ける豊かさを教えてくれました。