しっかり集中して聞いているはずなのに、ドラマのセリフが聞き取れなかったり、ガヤガヤした場所での会話が聞き取れなかったり…。聴力に問題がなくても聞き取りづらいと感じることがあれば、それはもしかしたら「聞き取り困難症(LiD)」かもしれません。長年LiDの研究を続けており、『聞いてるつもりなのに「話聞いてた?」と言われたら読む本』(飛鳥新社刊)を刊行した大阪公立大学の耳鼻科医・阪本浩一先生にお話を伺いました。
すべての画像を見る(全3枚)聴力に問題がなくても聞き取れないことがある!「LiD」って?
「近年、人が話していることがわからない、聞こえないと、私のもとを訪れる人が増えています。目立つのは、20代の女性でしょうか。もちろん男性の方もいらっしゃいますし、年齢は20代に限りません」
と阪本浩一先生。
そんなみなさんは、次のような困難を訴えるそうです。
「電話口でなにを言われているのかわからず、何度も話を聞き返してしまう」
「うるさい場所では、人の話を聞き取れない…」
「聞き間違いをしてしまい、笑われたりする」
「複数人の会話だとよくわからず、会話に入っていけない」
話に耳を傾け、むしろ聞き逃さないように真剣に話を聞いているのに、話の内容がよく聞き取れない、声は聞こえているけどなにを言っているかわからない、というお悩みが多いそう。
「そんな自分に不安を覚えた人は、聴力になにか問題があるのかな? と耳鼻科を訪れます。しかし、聴力検査をしてみると不思議なことに結果は『異常なし』。つまり、聴力に大きな問題はないのです。これがLiD、あるいはAPDと呼ばれるものです」
APDとは聴覚情報処理障害という症状のこと。英語にするとAuditory(聴覚) Processing(情報処理) Disorder(障害)であることから、その頭文字をとり、「APD」という略称で認知されてきました。しかし、海外ではListening(聞き取り)Difficulties(困難)=「LiD」と呼ばれていることから、国際的な基準に合わせて日本でも「LiD」と呼ぶ流れに変わってきているそうです。