戸建て住宅を購入した人の大多数が加入している火災保険。じつは、火事以外の自然災害についてもカバーしてくれます。宅地建物取引士の資格をもち、住宅にまつわる仕事もしているライターが遭遇した、雹(ひょう)による損害についてレポート。火災保険のおかげで必要な補修工事費をまかないました。保険申請から修理完了まで、体験したことを語ります。

雨樋に穴
突然の雹で、わが家の雨樋に穴があいた!
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ゴルフボールサイズの雹がわが家を直撃!

昨年4月、筆者が住む地域で雹が降りました。大きさはゴルフボールサイズとあって、あたり一帯でボコンボコンと大きな音が鳴り響き、恐ろしくて外に出るのもはばかられるほど。

しばらくするとやみましたが、翌朝、あらためてあたりを見回してみると…。ご近所のカーポートの屋根の破片が散乱し、看板や街灯の電球が飛び散るなど、けっこうな被害があったようでした。

雹が降る2年前に新築したわが家の被害はというと、幸いにも玄関の小さなへこみ程度。翌日には、ハウスメーカーの営業担当から安否確認のショートメールが届き、2日後にはアフター担当からも被害確認の電話がありました。

そのときは問題なしと思っていた筆者。「修理は不要」と余裕の返答したのですが…。

それから1週間後の雨の日のことです。雨だれの音がなんかいつもと違う。胸騒ぎを覚えながら家の外を見て回ると、雨どいに穴があいているではありませんか! それも何か所も! なんてこった! もっと確認しておけばよかった…。

プロの現地調査によって被害が次々と判明

被害状況の調査報告
ハウスメーカーによる被害状況の調査報告

こんな事態ははじめて。うろたえながらも保険会社に電話して、対応を聞きました。すると、自然災害については市役所などで発行される罹災証明が必要な場合もあるそうですが、今回は、罹災証明は不要で、被害の状況がわかる写真のみで対応可能とのこと。

災害の規模や保険会社によって対応が異なるのかもしれません。私のケースでは、役所に行かずにすむので非常に助かりました。

続いてハウスメーカーのアフター担当者にも連絡。修理についての見積もりを依頼することになりました。

それからアフター担当が現地調査に来たのは3週間後の5月末。近隣の家では、地元の工務店が5月中旬ごろにはすでに現地調査を行っています。なんだかわが家が放置されているようで、不安と焦燥が…。

調査では担当者がはしごを使って屋根に上がり、カメラで外壁や窓のサッシなどの損傷を細かくチェック。半日かけてじっくりと点検しました。1軒ずつ、こんなに細かく調査しているのなら、うちに来るまでに日数がかかっても仕方ないか…。

調査の結果、見積もりが手元に届いたのは7月中旬。梅雨までに直したかった。せめて台風が来るまでにはなんとかしたい…。気持ちが焦りました。

被害の全額が保険金でおりるわけではない

玄関ドアのへこみ
雹によって生じた玄関ドアのへこみは、補償対象外とのこと。機能に影響はないと判断されたため

ハウスメーカーから送られてきた修理の見積額は222万9293円(税込)。その内訳は以下の通りでした。

雨樋交換工事:59万0200円
屋根部材交換工事:66万9000円
エアコン室外機修理:32万8400円
玄関ドア交換工事:25万0500円
目隠しフェンス交換工事:16万8750円
網戸交換:1万9780円
消費税:20万2663円

筆者の目には雨どいの穴しか見えませんでしたが、けっこう傷や損傷があったようです。これはプロに見てもらわないとわかりません。

修理費用に関する詳細な見積もりが出るまで、1か月半かかりました。しかしこれは、現地調査に時間をかけていること、雹が降ったエリアが広く、対応しないといけない軒数が多かったからだろうと納得しました。

そして7月中旬に、保険会社に見積もりと被害写真を郵送。その後、保険会社の審査に約1か月かかり、8月中旬に保険適用範囲の連絡がありました。支払い時期は被害状況や審査の進捗によって異なるようです。

最終的に、約223万円(税込)の請求に対して、約140万円が保険金として支払われることになりました。

あれ? 全額を保険でまかなえるわけじゃないのか…。

雹で破られた網戸
雹で破られた網戸も補償対象とはなりませんでした。経年劣化によるものとみなされたよう

玄関、目隠しフェンス、室外機については、損傷が見られたものの、機能的に問題がないと判断され、保険の対象外となりました。火災保険は、機能に支障をきたす損傷のみを補償対象とするため、見た目だけの損傷や修理前からの経年劣化などについては保険金が支払われないとのことでした(ただ、保険の適用範囲は契約内容や審査基準によっても異なるため、詳細は各自、加入している保険会社に確認してください)。

保険金を受け取ることができた工事内容は以下の通りです。

・雨樋交換工事
・屋根部材交換工事
・網戸交換

これらの合計金額は127万8980円。さらに、見舞金として工事金額の10%にあたる12万7898円と、それぞれの消費税分14万0687円が支給されました。

これだけでもありがたい。すべて自腹だったらと思うとぞっとします。火災保険に入っておいてよかった!

わが家の火災保険の内容を確認しておくと安心です

修理の工事
修理の工事の様子。しっかり足場が架けられて、安全対策も十分に

最終的に、保険金は9月上旬に振り込まれ、「あとは自由に修理してください」との連絡を受けました。驚いたことに、修理完了後の報告写真は不要とのこと。

てっきり、保険金は修理工事が完了し、修理完了の写真を保険会社に提出した後に支払われるものと思っていたので、これは意外でした。ただし、保険会社や契約内容によっては、完了報告が必要なケースもあるかもしれません。事前に確認しておくことをおすすめします。

ちなみに、保険会社に確認したところ、「保険金を受け取っても、必ずしも工事を行う必要はない」とのことでした。あくまでも損害に対する補償であるためです。

ただし注意したいのは、保険会社は今回提出した写真や見積もり内容などの資料を保存しているということ。今後、火災保険の申請に対しては、過去の申請履歴を調べ、二重申請になっていないかを確認するとのことです。

このようなシステムがあるため、保険金を受け取って工事をした場合でも、今後の保険請求に備えて、工事完了時の写真を撮影しておいた方がいいかもしれません。

ともあれ、今回は火災保険に大感謝です。あらためて火災保険について知る、いい機会になりました。

わが家が契約した火災保険では、補償の対象として「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財」という3つのパターンがあります。「建物」とは、建物本体だけではなく、建物に備えつけの冷暖房や浴槽、流し台なども含まれます。「家財」とは、契約者または親族が所有している、建物に収容されているもの、たとえば家具やテレビ、冷蔵庫などのこと。

そして火災以外にも、今回のような雹や落雷、洪水、風災、雪害などの自然現象による被害も補償範囲に含まれています。また特約によっては物体の落下や飛来などによる損害、水濡れ、盗難など「日常生活で起きる損害」、失火見舞費用保険金など「事故に伴って発生する費用」なども補償範囲に加えることも可能でした。

保険の内容によって補償の対象や範囲、免責金額の有無、適用条件などにさまざまなケースがあるようです。興味をもたれた方は、ご自分の加入している火災保険の内容について、保険会社にあらためて確認しておくと安心できますよ。

なお、地震・津波・噴火などによる被害は火災保険では補償されません。地震保険は火災保険に付帯する形で加入する必要があります。