洋服、本、アクセサリー…減らすきっかけがないとついつい増えがちなものですが、デザイナーとして活躍し、パリで暮らして58年のデザイナーの弓・シャローさんは「もの執着しない暮らし」を送っています。弓さんが60代から実践してきた、ものを減らす生き方について紹介します。

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パリ在住のデザイナー:弓・シャローさん
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60代、70代、80代…私が減らしたものの歴史

もともと、ものにはあまり執着しないタイプです。

曾祖父、祖父と男爵の爵位をたまわりながら、戦後の混乱で生家は典型的な没落貴族が歩む道をたどりました。そのせいか、形あるものはいつかなくなると肌で感じているところがあるのでしょう。

●洋服について

収納

洋服は、昔から自分のもっているものをつねに把握できる状態にしています。

3年着なかったものはもちろん、あまり着ていないと感じたものや新しいものを購入して、ハンガーにかけられなくなったら、なにかを処分します。

そのためには、よく見渡せる状態にしておく必要があるので、お腹同様、クローゼットは八分目を心掛けています。

そのほかのことに関しても、60代半ばからダウンサイジングをしています。このころから、毎日の暮らしは身体に負担がかからないように工夫して、心地よく過ごすことの必要性を感じたからです。

スタートは65歳。ずっとフリーで働いていたので、定年は65歳! と自分で決めていました。ここから、本格的なダウンサイジングが始まりました。

60代で手放した本や住まいまわりのもの

まず本に関して。毎晩の読書は日課ですが、小説やエッセイなど読み終わった本は、パリ在住の日本人の友人たちに差し上げます。日本語を読みたいと思っていらっしゃる方ばかりなので喜ばれます。

●本について

そのほかの本に関しては、“本を捨てる”というのはとても抵抗がありますが、そのままにしておくとたまっていくばかりなので、処分しています。

美術書だけは捨てられなくて、いまだに大切にとっています。

雑誌の購入は、65歳の定年後はいっさいやめて、iPadでウェブの記事を読んだりしてすませています。

夫のクロードも息子のジャン・ポールも本好きで、彼らは週に一度図書館に足を運んでいました。現在はキンドル(電子書籍)も利用しているようです。

●住まいや家電について

いちばん大きかったのは、アパルトマンそのものでしょうか。

40年前、46歳のときにいまのアパルトマンを購入しましたが、その10年後にラッキーなことに隣の物件が売りに出されたので、即座に購入。

ドアをあけて2戸をつなげて、私のアトリエも兼用していました。

私がリタイアしたあと、結婚した息子が隣に住みたいというので、もともとの1戸を残し、隣は息子夫婦が住むようになりました。

仕事もやめた老夫婦二人の空間としては1戸で十分。掃除については、健康維持のために必要だと感じています。ただ、あまり神経質になって疲れてしまわないように、テキトーでよし! としています。

同じころ、大きなオーブンも処分しました。息子が小さかったころは、お菓子や大きな塊の肉を焼いていましたが、夫婦二人の生活ではその機会は減ります。そこで、コンパクトな電子オーブンレンジに替えました。

二つの機能をもつということは、能力的に劣るのでは? と気になりましたが、今の電化製品はそんなことはありません。

毎日の食卓もおもてなしの食卓も、料理もお菓子もこれで十分です。

大きかった食器洗い機も半分のサイズのものに。同時に位置が下の方に設置されていたので、高いところに替えて、かがまずにすむようにしました。

小さくなった分、洗う回数は増えましたが、かがまないでいいので腰の負担は減りました。また、こまめに洗って片付けるので、かえってラクでキッチンはいつもすっきりしています。

掃除機も使い勝手のよい『ダイソン』のコードレスのものに替えました。気付いたとき、すぐに使える小型のハンディークリーナーと併用しています。

また、フランスのアイロンは重くて大きいのですが、こちらもコンパクトな軽いものに替えました。家電製品は家族の人数に合わせてコンパクトにすることで、シニアにも軽くて使いやすくなります。電気代も変わってくるのではないでしょうか。技術も進化していますし。

使いやすいから、使いたい。使うことが苦ではなくなると思います。

使い勝手が悪いと感じるものがあるとしたら、それは自分の年齢や今の暮らしに合っていないということだと悟りました。