女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、出生地・スウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は「グリーフケア」について。落語家の桂雀々さん、音楽プロデューサーの大塚ガリバーさん…大切な人たちとの一生の別れへの気持ちを率直に語ります。志村けんさんや上島竜兵さん、山城新伍さんとの思い出も。
すべての画像を見る(全6枚)フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと
大切な人を失う悲しみと、どう向き合うのか
専門家の講義を受けて、学びを得る喜びを死ぬまでにあといくつ体験できるだろうか。最近はどんな事柄であってもついつい、あと何回、などと逆算するくせがついています。
私が運営をしてる千駄木にある「まいの間」というイベントスペースでも、学びをテーマにしたセミナーをいくつか開催しています。最近では「グリーフケア」についての学びが私の心に静かに響いています。
●グリーフケアとは?
グリーフというまだ耳慣れないこの言葉は「大切な人や身近な存在を失った際に生じる悲嘆」を意味しているそうです。グリーフケアはそんな悲嘆を抱えた人々を支援するケアのこと。
今回の講義では、主にペットロスに視点を当て、愛猫を失った悲しみとどう向き合い、受け入れていくのか。その過程に起こりうるさまざまな心理的変化について学びました。改めて「命」を考える大きなきっかけとなっています。
大塚ガリバーさん、桂雀々さんへの想い
2024年はじつは私にとって大切な友人たちが、若くして星になってしまった寂しい年でもありました。
10代の頃「青が散る」という番組で共演したことがきっかけとなり、それ以来、思春期・青春時代と、不安定に揺れ動いていた私をいつも支えてくれた大塚ガリバーが闘病の末に亡くなったのが今年の2月。
そして11月に、この数年は週に1度は下町で一献を交わすほど家族のような存在だった、落語家の桂雀々さん。
●早すぎる、友との永遠の別れに戸惑いを隠せず…
生きることへのエネルギーに満ちあふれ、常に笑顔と元気をたくさん振りまいてくれる存在だっただけに、突然目の前の道が崩れ落ちて、身動き取れなくなったような不思議な感覚に陥りました。
ともにまだ60代の早すぎる別れです。
「友の死」を受け入れることは容易ではありません。彼らがいた時間と、いなくなってしまったこれからの時間。どのように気持ちをきり替えて生きていけばよいのか、途方に暮れてしまいます。
コロナ禍には志村けんさん、上島竜兵さんとの別れも
コロナ禍に、長年親交のあった志村けんさんとの別れがあり、上島竜兵さんとの別れもありました。その事実を、もしかすると私は受け止められていなかったのかもしれません。いつの間にか、自己防衛が働き知らず知らず感情を呼び覚まさないように、自らがコントロールしたのでしょうか。
そんな私の心を今、雀々さんが思いきり叩いてくれているような、そんな心境にいます。
「悲しいときはしっかりと悲しみと向き合い、泣けるときは泣きなさい」。そうはっぱをかけられています。私の中に蘇る、向こうへと旅立った人たちの顔は皆、清々しい笑顔です。