更年期は心身さまざまなトラブルを感じやすい時期ですが、「膀胱炎」に代表される尿路感染症にかかってしまう人も多いことをご存知でしたか? そこで今回は女性の膀胱炎について、気をつけたいことや具体的な予防方法を、キッコーマン総合病院の鈴木基文先生に教えていただきました。鈴木先生は泌尿器科で主任部長を務める、まさに膀胱炎治療のプロです。繰り返しがちな膀胱炎に有効だという「クランベリージュース」の情報も伺いました。
閉経前後の女性は、膀胱炎に悩む人が急増。汗ばむ季節は要注意!
多くの女性にとって、更年期は心と体のステージが変わる節目の時期。
「更年期に感じる症状は人によりさまざまですが、一般的にはホルモンバランスが崩れて体のバリア機能が低下すると言われています。とくに注意したいのが膣内環境の変化。膣内には本来、善玉菌である乳酸菌が住んでいて、大腸菌など悪玉菌の侵入や繁殖を防いでくれています。ところが、加齢とともに膣内の乳酸菌は減少。知らず知らずのうちに大腸菌が増えてしまうことになります」
その大腸菌が尿道を通じて膀胱に侵入し、炎症を起こした状態。それが膀胱炎です。膀胱炎の症状は主に3つ。
・排尿時の痛み
・頻尿
・残尿感
排尿時に違和感を感じたり、トイレへ行ってもまだ尿が残っているような感覚が強いなら、膀胱炎を発症している可能性があります。
鈴木先生によると膀胱炎は男性より女性に多い病気で、何度も繰り返し発症してしまう人も多いそう。
「女性は膣と尿道、肛門の位置が近いうえ、男性と比べて尿道が短め。しかも更年期障害のひとつとされる尿失禁は、膀胱炎の再発リスクを約6倍に高めてしまうという研究報告も出ています。デリケートゾーンが不衛生になり、菌が繁殖しやすくなるからです」
さらに、現在のような暑い時期には膀胱炎にかかったり、再発したりする人が増加する傾向にあるとのこと。それはいったいなぜ?
「たくさん汗をかく夏場は、尿の量が減ってしまいます。トイレの回数も少なくなり、膀胱内の菌が排出されにくくなって炎症を起こしやすくなるのです。冷房で体が冷え、抵抗力が下がってしまうことも原因のひとつですね。私が勤務する泌尿器科でも、夏になると膀胱炎患者の受診が増えることを実感しています」
日常生活の中で今すぐできる膀胱炎対策2つ
膀胱炎を疑うような症状が出たら、病院を受診してすみやかに尿検査や治療を受けることが第一。では膀胱炎にならないため、再発させないためには普段どんなことに気をつければよいでしょうか?
●1:水分をしっかり摂る
「まずは水分をしっかり摂ること。脱水が心配だから水を飲むという人は多いのかもしれませんが、人間は呼吸するだけでも体内の水分を失っています。冷房の効いた部屋でも水分補給は怠らないようにしましょう。水分摂取の目安は、体重の2〜2.5%。体重50kgの人なら、1リットル〜1.5リットルとなります。運動したり、汗をかいたりしたら意識してさらに多めに摂ってください」
水分摂取量を増やすと尿の量が増え、膀胱炎の原因となる大腸菌が体の外に出やすくなります。
「尿の色を見て、濃い黄色やオレンジだったら水分不足のサイン。尿意を感じたら我慢せずにすぐにトイレに行くことも大事です。免疫力アップ、体を冷えから守るといった基本的な健康対策も、膀胱炎の予防に役立ってくれますよ」
●2:デリケートゾーンの清潔を保つ
もうひとつ、意識してほしいのはデリケートゾーンを清潔に保つこと。
「生理用品やパッド類は汚れたらこまめに取り替えましょう。大腸菌は便のなかにも多く存在しているので、排泄後は大腸菌が尿道口につかないように前から後ろ方向にふくことを心がけてください」
水以外でおすすめなのはクランベリージュース。ポリフェノールとキナ酸に注目
これらの生活習慣を意識しつつ、ほかにできることはあるのでしょうか。
「水分補給の一環としてクランベリージュースを取り入れてみてはいかがでしょうか。クランベリーには、膀胱炎の予防をはじめ尿路感染症に対しての有効性が報告されています。私も診察時、クランベリージュースの摂取をおすすめすることがあります」
クランベリーがなぜ膀胱炎対策にいいのでしょうか?
「ポリフェノールとキナ酸(有機酸)という2つの有効成分が含まれているからです。クランベリーにはポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンが豊富に含まれていて、尿路に大腸菌が付着するのを防いでくれます。いっぽうでキナ酸は、体内で吸収されると肝臓で「馬尿酸」に変換され、尿のpH値を下げて酸性化してくれるのです」
「通常、膣内や尿は弱酸性に保たれています。尿のpH値のバランスが崩れてアルカリ性に傾くと、大腸菌が繁殖しやすくなってしまうのです。クランベリージュースを飲むことで尿が酸性化し、膀胱炎の原因となる大腸菌の増加を防いでくれます。膀胱炎に一度以上かかったことがある人を対象にした調査では、クランベリー果汁飲料を飲み続けたグループのほうが、プラセボ飲料の摂取グループと比較して再発予防効果が確認できたというデータも発表されています」
クランベリージュースの選び方、飲み方を教えて!
膀胱炎の予防、そして繰り返す膀胱炎の再発を防いでくれる、クランベリーの有効成分。クランベリージュースは、なにを基準に選べばいいのでしょうか?
「濃度が高いほど、有効成分であるプロアントシアニジンとキナ酸をたくさん摂ることができます。果汁65% 以上の高濃度クランベリージュースを選べば、効果をより感じやすいのではないでしょうか。商品パッケージや販売元のホームページをチェックして、ポリフェノール(プロアントシアニジン)とキナ酸の量が掲載されているかどうかをぜひ確認してみてください。」
1日あたりの目安量は果汁100%のクランベリージュースで1日80mLほど(果汁65%なら125mLほど)。酸味を感じるようなら水や炭酸水で割ったり、はちみつを加えたりすると飲みやすくなる、と鈴木先生は言います。
ジュースなら年代問わず飲みやすく、日頃の膀胱炎対策にぴったり。連日の暑さで疲れ気味の今こそ、高濃度クランベリージュースや生活習慣の改善で体を守っていきたいものです。
お問い合わせ先/キッコーマンニュートリケア・ジャパン https://www.kagayaki-project.jp/counseling/form/