自分がよしと思うことを信じてやればいい

莉子さんは、とりあえず卵子凍結保存の説明だけでも受けようと、妊孕性温存の治療を行う病院を受診。そこで20代だと卵巣にある卵子の数が多いので、閉経しない可能性もあると説明されました。

「私は20代後半なので、微妙なところですよね。仮に治療後に閉経しなくても、妊娠・出産するには不妊治療が必要になる可能性は高いと言われました。もう、めちゃくちゃ悩みました。

たまたま、その病院に勤めている友人がいて、わざわざ私に会いにきてくれたんです。『自分がよしと思うことを信じてやればいいよ』と言ってくれ、その言葉に決断する勇気をもらいました。結婚や出産は不確かな未来だから、まずは自分の命のために一刻も早く抗がん剤治療を受けようと決めました」

若い世代のがん患者に特有の苦しさ

病室で誕生日を迎えた時の写真
抗がん剤治療中に迎えた27歳の誕生日
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15歳から39歳のがん患者は、AYA世代(Adolescent&Young Adult 思春期・若年成人)といわれ、1年間でがんを発症する人100人のうち2人程度(※)。この世代は子どもから大人へ、社会人へ、親へと大きくライフステージが変わる未来がある人たちです。まだ確定していない、でも「あるかもしれない」未来のことを短期間で考え、ときに決断しなければならないという特有の困難があります。

「自分がすでに結婚しているとか、子どもが何人かいるような状況だったら、こんなに迷わずに済んだんじゃないかな。それまで明るい未来が待っていると普通に思っていたので、まさか急に生きるか死ぬかの選択を迫られると思いませんでした」

 

※参考:がん情報サービス「AYA世代のがんについて」より

監修:西智弘先生(川崎市立井田病院 腫瘍内科部長・一般社団法人プラスケア代表理事