夫の最期の笑顔に救われた気になりました

古いアルバムをめくる哲代さん
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自宅で介護を続けていましたが、最期は入院したんです。ルール違反かもしれんけど、亡くなるとき、お酒を少し口に含ませてあげたんです。私の腕に抱いて。そうしたら、あがなええ顔したことないくらいににっこりしてね。こっくんって音までさせて。

「早う家に戻ってようけ飲みましょうで」って言ったら、またにっこりして。しばらくして、静かにすーっと旅立っていきました。

あの瞬間のことは忘れられません。つらい顔して逝かれると残されたもんはしんどいねえ。じゃがあの人みたいに元気なときでもえっと(たくさん)笑わん人が、死ぬときになってええ笑顔を見せてくれた。やり遂げたというんかな、救われた気になりました。

この人と結婚して間違いだったかなあと悩んだこともたしかにあったん。私の人生をささげたようなもんじゃったから。そうして長年抱えてきたもやもやした気持ちを、ほんまに最期に腕の中でね、全部なくならしてくれたんですね。自分の人生が肯定された気がしました。

夫婦いうんは、最初から完成されとるもんじゃありませんね。時間をかけてつくり上げていくもんじゃなあと思います。ごつごつとぶつかり合ってこすれ合って、ひとつになっていくというんかなあ。相手を認めて、自分の許容を増やして。ああ、難しいなあ。

え、生まれ変わったら良英さんと一緒になりたいかって? そうじゃなあ、もう一度人生をもらえるなら―。今度はなんにも縛られることなく、自由にひとりで飛ぶのもええなあ。

 

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