「店を継ぎます」という発言をした息子への思い

新刊を持つ笠原さん
著作とともに、お店の前で
すべての画像を見る(全3枚)

――先日はご自身のYouTube『笠原将弘の料理のほそ道』に息子さんが出演され、「店を継ぎます」という発言をされましたね。そのときの率直な感想をお聞かせください。

笠原:周りからいろいろたきつけられてるんだとは思いますけどね。でも、やっぱり、うちの店で働くうちに飲食業のおもしろさを肌で感じたんでしょうね。この先どうなるかはまだわからないけど、本気でやるなら親としては受け入れようと思います。

もちろん、めちゃくちゃ厳しいところに修業に行かせますけどね(笑)。外からうちの店を見る経験は絶対必要。ほかの料理人の方の仕事のやり方や考え方に触れることは、勉強になりますから。どこの店に修業に行かせようかと、今から楽しみですよ。寿司、そば、天ぷらとそれぞれゴリゴリに厳しい店に2年ずつ行かせようかとかね。仕上げにフレンチとか中華も行かせちゃおうかな。しまいには。パティシエの辻口さんのところでケーキも教わっちゃったりしてね。自分もそうしたかったから、うらやましいですよ。

――そのあと、息子さんにはなにか声をかけましたか?

笠原:YouTubeを撮り終わってまず、「ああいう大事な話は、もっとちゃんとしたところで言え」って言いました(笑)。うれしい気持ちはもちろんありますよ。飲食業はやりがいがあるし、息子が自分と同じ道に進むと思うと感慨深いですから。でもその反面、怖さもありますね。同じ業界にいると、子どもの実力がすべて見えますからね。仕事ができるのか、センスがあるのか、全部わかっちゃう。だれからも文句を言われないくらいの実力をつけて、父を超えてほしいですね。

――もし息子さんが跡を継ぐとなれば、今後の笠原さんの身のふり方も変わってきますよね。

笠原:本当なら50歳をすぎて、残りの仕事人生もあと20年くらいかなと考えてて、そろそろ仕事の規模を縮小しようと思っていたんです。最終的にはまた小さな焼き鳥屋をやりたいないとも思っていたので、そういう方向にシフトチェンジしようかと。でも、息子があんなことを言ったもんだから、「そうか、もうちょっとこのまま走り続けなきゃな」とは思いました。僕の人生設計も狂っちゃいましたね、うれしい誤算ですけど(笑)。まだしばらくは、毎晩のビールを楽しみに厨房に立ち続けます。

 

円熟味を増し、さらに変化し続ける笠原さんの「極みおかず」が満載の新刊『笠原将弘の献立の極み70』、既刊『笠原将弘の副菜の極み158』(共に扶桑社刊)は発売中です。

笠原将弘の献立の極み70 (別冊エッセ)

笠原将弘の献立の極み70(別冊エッセ)

Amazonで見る
笠原将弘の副菜の極み158 (別冊エッセ)

笠原将弘の副菜の極み158(別冊エッセ)

Amazonで見る
50代からの毎日を応援する記事多数!「これからの暮らし by ESSEonline」はこちら