テレビ番組『あさイチ』にスーパー主婦として登場し、話題になった料理家の足立洋子さん(72歳)。夫の急逝と子どもの独立で、およそ20年ひとり暮らしを続けています。気力や体力が落ちこむ「70代の壁」に直面しながらも、日々を明るく前向きに過ごしている足立さんが、自分がご機嫌になるための毎日の工夫を1冊にまとめた書籍『さあ、なに食べよう? 70代の台所』(扶桑社刊)より、自分の“老い”を受け入れる足立さんの言葉を紹介します。
すべての画像を見る(全2枚)「体と心が一致しない」そんな自分も受け止めて
このところ、「体力」と「気力」、果たしてどっちが先なのかな、と思うことがあります。体力がなくなってきているから気力も落ちているのか、それともその逆なのか。
たとえばちょっと風邪をひいて症状が長引くと、気持ちもどんどん弱気になります。心を引っ張り上げようにも、なかなかどうして、上向きにならない。かと思えば、お友達と一緒に大張り切りで楽しんだブルーベリー狩りの翌日は、「あ~楽しかった!」と十分に満たされた心とは裏腹に、足腰が痛くて丸二日間は休養が必要、なんてこともあります。
60代ではまったく感じなかった、70歳を超えてからの大きな壁です。
70代は老いていくときにおける、ひとつの節目
そんなふうに私が、「だから70代はいやだわ~」なんて言っていると、御年95歳である母は、「90を過ぎたら覚悟が決まるわよ! 開き直るから」とひと言。さすが人生の先輩は堂に入っています。
でも、そんな母ですら「これまでで、いちばんいやだったのは70歳」と言っていますし、私のよく知る、とってもパワフルな現在80代の知人も、齢70のときには「寂しい、寂しい」と呟いていたことを覚えています。だから70代というのは、老いていくときにおける、ひとつの節目なのかもしれませんね。
気持ちを引っ張り上げようにも、なかなか60代までのときのようにはいかなくなっている今、ただ思うのは、「そういう自分とつき合っていくよりほかはない」ということ。
元気そうに見えて、いえ実際元気なんですけどね、でもどこかしらにささいな不調があったりする。そういうことも含めてが「歳を重ねる」ということで、私は今その経験を生まれて初めてしているんだな、と。
いつか、「70代になったときには随分いろんなことを思っていたけれど、そういえばこの頃はすっかり忘れていたわ!」なーんて思える日が来るんじゃないのかなって、そんなふうにも思っています。
足立洋子さんの暮らしの工夫やひとり暮らしに役立つレシピ、53歳で夫を亡くし、立ち直るまでの心の動きを綴った『さあ、なに食べよう? 70代の台所』(扶桑社刊)は発売中です。