更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。最新の情報をまとめた自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)から、更年期にあらわれやすい関節症について解説します。

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動ける体の要はひざ関節。手・指の使いすぎにも注意(※画像はイメージです)
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“元気で長生き”のために欠かせない関節の健康

日本人女性の平均寿命は87.09歳(令和4年)、健康寿命は75.38歳(令和元年)――約12年の差があります。

一方、介護が必要になった理由は上位から認知症、脳血管障害、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患。衰弱の背景には筋量の減少(サルコペニア)があり、要介護要因のかなりの部分を運動器(骨と筋肉と関節)疾患が占めています。

元気で長く生きるには骨、筋肉とそれらの動きを支える関節の健康が欠かせません。

この度、運動器に関する大規模な疫学調査が行われ、関節症の性差やリスクが明らかになりました。変形性ひざ関節症は男性より女性に多く、更年期以降増えてきます。閉経によるエストロゲン(女性ホルモンのひとつ)の減少が関節症の発症にも関係しているのです。治療法に関する新たな動きも。「ラジオ波治療」が保険適用になり、薬が十分に効かず手術は適用外だった人も痛みを改善しやすくなりました。

●加齢とともに軟骨がすり減る。女性に多いひざの関節症

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変形性関節症は、関節と関節の間でクッションの役割をする軟骨が老化とともに弾力を失い、使いすぎによってすり減るなどして関節が変形した状態をさします。

ひざ、股関節、腰椎などに生じ、なかでも女性に多いのはひざの関節症。大規模調査ROADスタディで40歳以上の女性の6割以上にその所見があることがわかりました。初期には動き始めに痛む程度ですが、やがて歩行中も痛み、階段の昇降や正座が困難になり、変形が目立ち、歩行に支障が出てきます。

●なぜ閉経後に多い?エストロゲンが関節に及ぼす影響

ひざの関節症が更年期以降に増えてくる要因に女性ホルモン・エストロゲンの減少が関係しています。エストロゲンは軟骨を構成するコラーゲンの生成にかかわっており、閉経により分泌が減ると軟骨がつくられにくくなり痛みを感じやすくなるのです。

また、エストロゲン欠乏に伴って筋力が低下し関節の負担が増えることも要因の1つと考えられています。