今、団地での暮らしに注目が集まっています。「リノベーションすることで割安感のある好みの住まいになる」「建物がある敷地が広くて緑が豊か」といったことがおもな理由。
家族と一緒だったり、ひとり暮らしだったり、さまざまな年代、ライフスタイルの方の団地住まいの実例を紹介している『団地で見つけた身軽で豊かな暮らし方』より、団地を舞台にリアルなシニアライフを描いた漫画『ぼっち死の館』の作者で、自身も団地でひとり暮らしをしている77歳の漫画家・齋藤なずなさんにお話を伺いました。
団地の魅力は家賃と広さのバランス
すべての画像を見る(全7枚)かつては「ニュータウン」としてにぎわった大型団地も、住んでいるのは高齢者と野良猫ばかり。しかし、その一人ひとりの暮らしにはドラマがあり、悲喜こもごものエピソードがあります。
東京で生まれ、静岡で育った齋藤さん。子ども時代を過ごした家は一戸建てだったそうですが、独立して以降の住まいはアパートや団地など、ずっと集合住宅だと言います。たまたま、義理のお兄さんの代わりに一時的に暮らしたのが団地との出合い。出ることになったとき、アパートも探してみたそうですが…。
「団地と同じぐらいの家賃で探すと、アパートの場合、もっと狭いところしか見つからないんですよ。そう考えたら広さもちょうどいいし、間取りも便利。団地って優秀だなあと。以来、人生の半分近く団地暮らしです」
団地内の人間関係も、魅力のひとつです。
「20年もここに住んでいると、自然と顔見知りも増えます。仲よしのお友達同士だと、互いの家にお茶を飲みに行ったり来たり。みんなほぼ同じ広さ・同じような家ですからね。だれかの家が豪邸でだれかの家があばら屋だ、なんてことはないわけです(笑)。つまり、みーんな似たり寄ったり。今さらだれも気取ったりしません」
作品の中では、団地で大小さまざまな事件が起こります。
「作中のエピソードのほとんどは私の創作。でも、タイトルにもなっている『ぼっち死の館』っていう話は、事実に基づいて描いた部分があります」