作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。子どもの夏休み真っただ中の今、多くの子どもが取り組む「読書感想文」についてつづってくれました。
第103回「夏休みと読書感想文」
すべての画像を見る(全3枚)夏休み真っ只中! お子さんたち、いかがお過ごしでしょうか。
「夏休みって、これから40日もあるんよ」
「やったー、まだまだ遊んでられるー!!」
7月末、小1になった甥っ子に、中1の兄が自慢気に話している。ふっふふ。そう言っている間に8月末になって、べそをかかんようにな。
今日は、姪っ子から読書感想文が書けたよとラインが来た。
「自分にあったことは書けても、本の感想は言葉にしづらいよ」
と、以前言っていたが、早々と大仕事を終えたようだ。
●読書感想文に取り組みやすくなるコツ
私も、小学生の頃からエッセイ的なものは得意だった。日記とか、健康作文とか、人権作文とか、自分の身の回りに起こったことを書けばいいからだ。読書感想文は、毎年8月31日の深夜になっても書けなかった。「読書感想文」という難しそうなお題が良くないと思う。あまりに抽象的だ。長編の本になれば、その時々でいろんな気持ちが湧き上がってくるもの。
そろそろ「友達に勧めるこの一冊」というタイトルにしてはどうかねえ。読書感想文とは、つまりは「書評」である。今でも書評とか展覧会評を書くのが一番難しい。もちろんやりがいはあるのだが、とても時間がかかるのだ。
「〇〇なときにお勧めの本」とか「高校生にお勧めの本」などで執筆を依頼されることがあるが、このように的を絞れば随分書きやすくなるものだ。読書感想文があまりに漠然として難しい子には、ぜひ「この本を私にお勧めしてみて」と聞いて、しゃべってもらうところから初めてはどうだろう。私も、友人や近所の方と、そのテーマについて話しながら、ヒントを得ることがある。なので、まずはどんどんとしゃべって、広告の裏にでも思いを書きなぐって、それを組み立てていけば、人に伝わる文章になる。
その中で注意するのが、何を書いて何を書かないかだ。書かない勇気を。全てを書いてしまっては、それこそまとまりのない雑然とした文章になってしまうので、より強烈に思ったことや、自身の経験とリンクしたこと、さらに自分の生活に活かせることなどの深まり…みたいなところまでいけたら、大作になるんだろうなあと思う。
●子どもたちにとっての夏休みのあり方
みなさんご存知の通り、夏休みは長いようであっという間に終わってしまう。宿題も、いやだいやだと思いながらするよりは、やりきった、楽しかったと思える方がいい。
大人になって、料理や畑をするようになると、毎日が自由研究みたいだ。野菜の観察から気づきを得るし、日々の生活は科学だなあと実感する。今ならいくらでも自由研究できる。姪っ子よ、甥っ子よ、ここにたくさんのヒントがあるぞ。困ったら私を頼ってくれ。と、聞いてみたけど、自由研究はないんだそうです。えー。やったらいいのに。
プールは昔みたいに日中には行われず、親も同伴で夕方から予約者のみがレッスンを受けられることになっているようだ。毎日、少しずつ泳げるようになっていく姪っ子の頑張りを見ていると、夏休みって、頑張る子にとってはとても大きな40日なんだなと思う。
一方で、ゲームばかりしている小1の弟よ。姉を見習いなさい(プール教室は低学年は入れないそうだ)。この猛暑、外で遊んできなさいとも言えないし、この機会に本を読んでみては? と勧めてみるけど、(ゲームの他は)今は工作や絵を描く方が好きみたいで、これはこれでいい夏休みだなあと思う。
「やらされる」から、「やりきった」「頑張った」と、自発的に達成する喜びに変えられるときが来たら子どもたちはぐんと成長するのだろう。
そこまでが、親たちにとっても試練のときなのでしょう。ときには、叔母や祖父母を頼ってみてください。案外と面白い研究ができるかもしれませんよ。
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