ESSE本誌でもおなじみの、料理家の上田淳子さん。

50代を超えたご自身の、暮らし方の変化や工夫についてつづったエッセイ『今さら、再びの夫婦二人暮らし』(オレンジページ)が話題を集めています。ここでは、そんな上田淳子さんに、子育ての終了と子ども達の独立による住居の変化、そして再び夫婦2人の生活となった今について、お話を伺いました。

子どもの独立、夫婦2人暮らしのスタートを機に、料理家の上田淳子さんが手放したもの、手に入れたもの

上田淳子さん
上田淳子さん
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――長年暮らした戸建て住宅を手放し、今は夫と2人でコンパクトな住まいで暮らしている上田さん。どのようなきっかけがあったのでしょうか?

●コロナ禍をきっかけに住まいをリサイズ。これまでよりもゆったり過ごせるように

上田淳子さん(以下上田):大きなきっかけはコロナ禍でした。その少し前から夫とは、『老後はどういう暮らし方をしようか?』という話は出ていたものの、漠然とした内容で終わっていました。それが緊急事態宣言中に、私、夫、息子2人の4人がずーっと家にいる状態を経験して。そこで初めて、家族それぞれのプライベートスペースの持ち方や、今後の住まい方について考えました。

その後、社会人になった息子2人が独立し、それぞれがひとり暮らしをスタートさせたこともあり、ますます、夫婦2人で快適に暮らす“居場所づくり”を考えるようになりました。

――そこで上田さんご夫妻が行ったのは、住まいのリサイズ&夫婦それぞれの空間を持つことでした。

上田:家族4人で一緒に暮らしていた戸建て住宅は、もはや夫婦2人には広すぎると判断。そして、ものも増えすぎていました。そこで空間も持ち物も改めて見直し、今の私たちが住みやすい家へと引っ越しました。新居ではリビング&ダイニング、寝室、そして夫婦それぞれが“基地(ベース)”と呼ぶプライベートな空間を持って生活しています。

リビングもダイニングも、前の家よりも狭くなりましたし、キッチンは半分ぐらいのサイズになっています。それでも、新居に持ってくるものは極力減らしたので、リビングでくつろぐときは、昔よりもゆったりと過ごせています。

●前より狭い住まいでも「のびのびと暮らすコツ」

リビング
上田さんの新しい家のリビング/『今さら、再びの夫婦二人暮らし』(オレンジページ)より 撮影/鈴木康史

――リビングにはソファではなく小さなイスを置く、欲しい家具があれば夫と意見を出し合い、お互いが納得できなければいったん見送るなど、「減らし、増やさない」生活が快適だという上田さん。とくに上田さんの場合は、住まいのサイズダウンにあたり、夫や息子2人にも、たくさんのものを手放してもらったと言います。とは言え、家族の間での片づけは、きれいごとではすまされないことも多々。どうやって整理や片づけを促したのでしょうか?

上田:息子達にはダンボール箱を2つ渡して『この中に入る量で、どうしても実家に残したいものだけ選びなさい』と言いました。ちょうど社会人になったタイミングだったので、子どもの頃に遊んだゲーム類、学生時代のカバンなどは『もう使わないね』という話になり、かなりコンパクトにものをまとめていました。

夫の場合は、彼のプライベートスペースに収納でき、さらに自分で管理できる分の荷物をまとめて、と伝えました。なので、彼がなにを残し、なにを持っていったのか、じつは私もまったく知らないんです(笑)。

上田さん

――家族の片づけのコツは「深入りしないこと」と上田さんは言います。

上田:家族と言えども、大切なものは人それぞれ。残す量は決めて、あとは各自の判断にまかせること。こうやって、家族4人で暮らしてきた時代のものを改めて見直し、それぞれで“要るもの” “要らないもの”を取捨選択していきました。

――そして一気にやらないことも大切、とも。

上田:私たち夫婦が50代、息子たちが20代と体力がある世代でも、一気にまとめてやることはせずに、少しずつものの整理をしていきました。それでも約20年以上の生活の中で溜まったものを片づけるのはラクなことではなかったです。もし、私や夫が70~80代になってから行ったら、かなり大変な作業になっていたと実感しました

こうして選び抜いた大切なものは、それぞれが管理。新しい家では、リビングに家族のものが散らかることもなくなりました。