作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。今回は、そろそろ来てしまったかもしれない老眼についてつづってくれました。

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第97回「老眼的なのがきてるかも」

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「なんか、最近携帯の文字がぼやけるんよねえ」と姉。

「え、それってもしかして…」

「老眼よなあ…」

ついに来たのね。

3つ歳上の姉は、体型も変わらないしいつも若々しい。私は白髪もちらほら生えてくるけど姉は全く生えてこなかった。姉妹なのに体質って違うんやなあ、羨ましいなあと思っていた。姉も私も近眼なので、きっと二人とも老眼がくるのは遅いよねと高をくくっていた節もある。あれって都市伝説なのかなあ。姉はスマホを遠ざけてLINEの返事を打った。

スマホを見る女性
※写真はイメージです

そうこう言っていたら私も、

「ん…辞書の文字が見えにくいな」

「あれ、スマホの文字も…」

やべえぞ。私にもついに老眼来てしまったのか。まだ41歳、早い気がするけど、同い年のみなさんどうでしょう? 仕事柄、どうしても本とかパソコンとか、近くを見て過ごす時間が長いので、眼精疲労もたまっているのだろう。

●遠くの山を見ると目がよくなるは本当?

視力は両目で見ても0.02と、ど近眼である。中学時代からコンタクトをつけてきたし、20代はコンタクトしたまま寝たり、朝まで遊んだり、私は目を酷使してきた。今だって、職業柄、本や、ノート、パソコン、近くばかり見ている。

パソコンやスマホを見ているときは無意識に瞬きをしてないことが多いそうで、現代人の多くがドライアイになっているそうだ。瞬きしているようでも、しっかりと目を閉じなければ目を潤す成分が出てこないようなのだ。かくいう私もドライアイである。

山
※写真はイメージです

今は、愛媛で農業もしているので、気をつけて遠くの山々を見渡すようにしている。すると、再び目は復活し、近くの文字も読めるようになった。

目が疲れて近くが見えない→畑に行って回復→パソコンしすぎで近くが見えない→緑を見て回復。これを繰り返しているのだった。嘘みたいだけど、昔から言われている「遠くの山や緑を見ると目にいい」っていうのは本当だと、自ら実証してしまった。

数年前まではドライアイが酷かったのだけれど、コロナ禍で外に出なかった数年間、コンタクトをせずに眼鏡で過ごす時間が長かったからだろう、すっかり良くなった。

●目の健康のために気をつけたいこと

久々に眼科に行って定期検診を受けた。角膜や眼圧検査の次に、網膜の写真も取ってもらった。私のような強近視の場合、眼球が卵型になってしまっていて、それによって網膜が引き伸ばされて薄くなり破れていってしまうことも多いそうなのだ。

「高橋さんは、網膜がまだ綺麗ですね。ただ、近視が強いので、引き続き気をつけて目を酷使しないようにしてくださいね」

ほっとした。どんどん楕円形になっている私の眼球…。想像しただけで怖い。近視を軽く見てはいけないんだな。今後、ストッキングが破れるみたいに、網膜が引っ張られて破れていくことも大いに考えられる。

スマホゲームやパソコンのやりすぎで、ドライアイをはじめ、様々な目の病気が増えているのだと先生は言った。液晶画面を見るときは意識してしっかりとした瞬きをすること、ブルーライトカットの保護フィルムを貼ること、よく睡眠を取ること、遠くを眺めること、なにより、一年に一度は定期検診を受けることをおすすめされた。

「私も老眼そろそろ来るんかなあ。怖いなあ。よく目を休めてねばるわー」

と姉に言いながら、でも近い将来、老眼になるのだろうと覚悟を決めたのだった。もう徹夜はしない。コンタクトつけっぱなしで寝ない。ときどき遠くの山を見る。

こうして、無茶しなくなるんだなあ。20代の奔放な日々を遠い目で眺める今日この頃だ。

 

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