作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。今回は、不要になったものをフリーマーケットで放出した話についてつづってくれました。

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第93回「お家でフリーマーケット」

暮らしっく
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暮らしっく』(扶桑社刊)でも「捨てられないもの」について書いたけれど、本にも登場した、私と同じく捨てられない派のおばちゃんがいる。終活をしているそうで、娘さんやおじさんから「捨てろ捨てろ」と言われ続けているんだそうで。お気の毒さまやねえ。

「くみちゃん、服がいろいろあるんだけど見にこない?」

おおー。再びですかー! OK、行きますよー!!

「くみちゃん、お皿もいっぱいあるんだけど見にこない?」

次はお皿ですかー! 行きますよ!

洋服選び

ってなわけで、おばちゃんの実家に母と何度となく足を運んだ。レトロ好きな私としては、昭和な柄の服とか、赤い梅や松のかわいいお皿もときめきまくる。納屋に積み上げられた皿は、1種類がなんと20枚~40枚ずつあった。

「昔はみんな家で結婚式をしよったからねえ。全部40は揃えよったねえ」

「そうそう。うちもあるわー。小鉢も吸物椀も刺身皿も茶碗も40ずつある」

母とおばちゃんの話に仰天する。ミニマムな生活が主流になりつつある今では考えられない数だ。

以前も、レトロな服をもらってファッションショーをしたんだけれど、おばちゃん…まだまだあるんやな。とても、私一人では太刀打ちできない量だ。昔の服は日本製で縫製も生地もよく、まだまだ着られそうだ。デザインも一周回って今の若者に人気じゃないかな。洋服好きな私としても、とても捨てられないと思った。

●フリーマーケットを開催

救世主は小学3年生の姪っ子だった。小学校で毎年開催されているフリーマーケットがコロナにより、1~3年まで全て中止になってしまったという。

「一度でいいからフリマがしたいなあ」

と彼女はいった。

「そうだ、今こそフリマしよう!」

ということで、早速一緒に畑をしている仲間に声をかけて我が家で開催することになった。仲間たちも、食器やメモ帳など箱いっぱいに持ってきてくれた。食器類は駐車場にゴザをひいて並べ、服は試着できる家の中に並べた。

フリーマーケット

「わー。これかわいいですねえ」

「すごいデザインの服が出てきたー! 時代を感じるわー」

ダンボール4箱分の洋服をひっくり返して、女子たちは目を輝かせて見ている。「絶対にこれは誰も買わんから置いていきなー」と母が言っていた、おじさんの3Lの服から売れていく。母が目を丸くしている。

「ええー! それ着るん?」

「かわいいですよー」

と、若者たち。今、だぼっとした服が人気なんですよねえ。

フリーマーケット

姉家族もやってきて、子どもたちは自作のガチャガチャを持ってきている。ダンボール製の棒を回すとカプセルが出てくる仕組みに大人たちは大絶賛。マスキングテープとかおもちゃが入ったカプセルが落ちてくる。家にあって使わない小物を入れているらしい。私もやってみたが…なんと「締切り」と書かれたマスキングテープが出てきた。本当に原稿の締切に追われていたときだったので、みんなが大笑いしたのだった。

値段は、20~50円。物々交換でもいいんだけれど、少しでもお金を出す方が大事にしそうだなと思って、大体が50円以内でやりとりされた。

そうめんを入れるガラスの大皿が一番人気で、それも母たち的には意外だったみたい。大皿って買ったら高いし、たまにしか出番がないのでフリマで見つけるくらいでいいのかもしれないね。私は、インドっぽい柄の急須と湯呑のセットをゲットした。

「えー。こっちの方がかわいくないですか?」

「私はこっちが好きだなあ」

好みが人によって分かれるのもおもしろい。

夕方になって、お皿は半分くらいになっていた。洋服は、ダンボール1箱分は減ったかなあ。

「あー、スッキリしたねえ。フリマして良かったねえ」

おばちゃんもとても喜んでくれた。

●残ってしまった服の行方は…

しかし残り3箱の服。おばちゃんに返しにいっても、あとはいよいよ捨てるだけである。

そうだ! 行きつけのカフェが、不要になった服を店内で販売し、売上を保護猫の施設に寄付しているのを思い出した。みんな家で着なくなった服を持ちより販売しているのだ。翌日、ダンボール3杯分の服を車に積んでカフェに行った。同じく洋服好きな店長さんとダンボールを開けて、

「これとこれを合わせたらかわいくないですか?」

「あの子に似合いそうじゃない? 勧めてみるね」

と、盛り上がる。

翌日、店長さんから「早速2着売れましたよー」とメールがあった。おばちゃんに報告すると、本当に嬉しそう。自分が好きだった服を必要としてくれ、さらに猫の役にも立ったことを誇らしく思ったのではないだろうか。

自分にはもう不要でも、誰かにとっては「かわいい!」「ほしい!」と、ときめくものかもしれない。捨てる前に、もう一度活かせる場所はないか、まわりを見渡してみて良かったなと思った。というより、フリーマーケットめちゃくちゃおもしろいな。まだ残りのお皿があるので、もう一回くらい違う人を呼んでやってみようかな。

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