「空気が読めない」「毎日の家事ができない」…。それは性格や努力不足ではなく、「発達障害」だからなのかもしれません。
障害とともに自分らしく暮らすには、どのように工夫すればよいのでしょう。
ここでは発達障害に詳しい医師の宮尾益知さんに詳しく伺いました。
注目される大人の発達障害。思い当たることはありませんか?
“発達障害”という言葉が広く知られるようになって数年。当初子どもの問題と考えられることが多かったものの、最近は大人の問題としても語られるようになりました。
「発達障害は脳の生まれもった特性です。昔からそういった障害をもった方は一定数いて、それでも周囲の人とともに生活を送っていました。つまり、症状のある人自体が増えているわけではありません。しかし、近年の社会状況から、診断を受ける方が増えるように。学生時代まではうまくやれていた人でも、社会に出てから困難を強く感じ、そこで初めて障害に気づくケースも」
そう語る宮尾さん。とくに女性は、男性に比べて子ども時代には障害が目立ちにくいそう。
「最近は、社会に寛容性がなくなり、昔なら“ちょっと変わっている”と思われる程度ですんでいた人たちが、“空気が読めない”と排除されがちに。障害をもつ人にとっては生きづらい世の中になってしまいました。しかし、発達障害を抱えていても、対処法を身につけたり、周囲の理解を得たり工夫しながら、幸せに暮らしている人もたくさんいます。障害があることを悲観せず、自分の人生を大切にしてほしいですね」
よくある大人の発達障害の一例を紹介します。
●余計なことを言ってしまう
●パニックを起こしやすい
●ケアレスミスが多い
●時間が守れない
大人の発達障害のひとつ、「LD(学習障害)」とは?
「LD(学習障害)」とは、脳の認知機能の不具合であると考えられています。知能には問題がないのに、伝達がうまくいかない状態です。LDの特性は、一人ひとり異なって表れ、ADHDなどほかの発達障害と併存している場合も。
●基本的な特性
LDは、知能は正常であっても、脳の認知機能=読む・聞く・話す・書く・計算する・推論するといった6つの機能のいずれかに不具合が生じた状態をいいます。
「“読み書きそろばん”的能力が求められていた学生時代は大変でも、大人になって、日常生活を送る分には困難を感じずにすむこともあるのがLDです」
●できないことの例
・聞く(言葉の復唱、会話を理解する)
・話す(筋道を立てて話す、要点をまとめてシンプルに話す)
・読む(文字の発音、音読はできても意味が理解できない)
・書く(正しい文字を書く、複雑な文章を書く)
・計算(暗算、繰り上がり、繰り下がりの理解)
●対処法
認知機能のいずれかに障害があるだけなので、たとえば、文章を読めなくても、人に読んでもらい音で聞けば理解できたりします。
「周囲に自分の特性を理解してもらい、助けてもらうことで、社会生活はうまく回るでしょう」